1. EXest株式会社 中林 幸宏 氏

東京都創業NETインタビュー

EXest株式会社 中林 幸宏 氏

EXest株式会社  代表取締役CEO
中林 幸宏氏
早稲田大学卒業後、地方テレビ局に入局し、番組制作や広告営業の業務を行う。2015年同大学大学院にてMBA取得。プラットフォーム戦略と経営戦略を学び、シリコンバレーのスタートアップを経て2016年6月に1社目となるPool&Moon株式会社を設立。マーケティング・コンサルティング会社を立ち上げる。更なるプラットフォームビジネスの発展のため、2016年12月に2社目となるEXest株式会社を設立し、外国人観光客とガイドをマッチングするサービス「WOW U」を開始。
WOW U 公式サイト

これまで出会えなかった人と人をつなぎ「WOW」を創出する

外国人観光客に対し、日本は何ができるのか。より観光客のニーズに沿った形でサービスを提供するべく、外国人観光客と通訳案内士をマッチングするWebプラットフォーム「WOW U」。観光客の求めるツアーやアクティビティを提供しながら、更なるサービスの進化を遂げようとしている。
2020年の大幅な外国人観光客の増加を控え、ガイドの育成と同時に、より具体的なリコメンドをピックアップできるAIを大手企業と共同開発中

「上には上がいる」と思い知らされた準備期間

大学卒業後に就職した地方テレビ局に勤めている時は、周囲からの評価も高く、「優秀な営業マン」を自負していました。

プラットフォームビジネスでの起業を目指し、母校でMBAを取得したのですが、その時に出会った仲間が優秀な人材ばかり。「上には上がいる」と痛感しました。特にファイナンスや管理会計などの分野で、自分の力不足を感じたのです。「この状態で起業してはダメだ」と思い、シリコンバレーのスタートアップイベントに参加しました。そこで世界中から集まった起業家や投資家に触れたことは、貴重な経験となりました。
新しいビジネスモデルが次々と誕生するのを目のあたりにし、発展的な人々に刺激されて、起業する気持ちが高まっていったのです。

中林 幸宏インタビュー01

真のアントレプレナーとは?2度目のシリコンバレーで受けたショックと学び

2016年6月、会社員の時に貯めた資金100万円を元手に、Pool&Moon株式会社を設立。テレビとデジタルを活用したマーケティングやコンサルティングを行いました。

テレビ局で培った技術と人脈を活かし、最初から多くの仕事をいただくことができて、事業は順調でした。そこでもう一度シリコンバレーに行った際に、現地のベンチャーキャピタルの担当の方に「やっぱり顧客のニーズにマッチすることで、稼ぐことができるんですよね」と成功体験を披露しました。すると、「そんなのはただの自己満足であって、アントレプレナーではない、本気で世界を変える気持ちで市場を作れ」と酷評が返ってきたのです。今思えば少し天狗になっていた部分もありましたが、自信があった分、正直なところショックでした。

確かに周りを見回すと、そこには「自分が創り出していくもので、どうやってこの世界をよりよいものにしていくか」を考えている人たちばかりでした。「稼げるからそれでいい」なんて満足している人はいなかったのです。
改めて自分もそういう人になりたい、プラットフォームビジネスをやっていきたい、という思いが強くなり、もうひとつの事業を立ち上げることにしました。

本格的なプラットフォームビジネスの立ち上げ

中林幸宏インタビュー02

2社目に立ち上げたのが、外国人観光客とガイドをマッチングするサービス「WOW U」を事業とするEXest株式会社です。

自分の強みである人脈の広さを活かして何ができるかを考えた時に、注目したのが外国人向けの観光業でした。海外の人たちと接して感じていたのは、「日本のことをよく知らない」ということだったのです。

世界のたくさんの人たちに、「日本に来てよかった」と思える経験をしてほしい。そのために、外国人観光客が求める観光の内容は何かというデータが必要だと考えました。

そこで地方のテレビ局と提携し、「桜が開花しました」などの歳時記的なニュースや、地元の人しか知らないローカル観光スポット等の地域に密着した番組やニュース映像をもらってデジタル化し、SNSで発信していったのです。
様々なニュースを発信しながら、日本に興味のある世界中の人々が「いいね」やシェアをしてくれる内容を絞り込んでいくことができるようになりました。

そのようにして集まった「外国人観光客が興味のある内容」について、通訳案内士がツアーやアクティビティをガイドしていくプランを作成し、実際に観光客に提供します。旅が終わった後に、それぞれのツアーやガイドに評価をしてもらい、そのデータも次のリコメンドとして活用していくという仕組みができあがっていきました。

全国の地方テレビ局との提携も完成し、各地のあらゆる観光情報を発信しているので、日本全体の観光を世界にアピールすることが可能になっています。

資金の確保や、流れを把握することも重要

事業を始める時に必要な初期費用は、内容によって大きく差が出ます。プラットフォームはサービスを提供して利益を生む前に大きなシステムを作る必要があるため、軌道に乗せるまでに多額の資金が必要になります。また、手元の資金がいつのタイミングで不足するという予測を立てて、資金調達が必要になる時期を把握しておくことも重要です。
1社目の収入があったので、当初は自己資金で賄っていましたが、今は3メガバンクのベンチャーキャピタルなどからも投資を受けながら運営しています。

自分がハブになって人と人とをつなげていく

中林 幸宏インタビュー03

現在は、会社の組織を業務内容に沿って3つの部門を設けています。 「メディア部門」では、地方テレビ局と連携しながら、各地の観光にまつわる情報をスムーズに発信できる体制を整えています。

ガイドの質の向上と、サービスのレベルアップのための「教育部門」は、国家資格である通訳案内士に対して、「WOW U」のマッチングサービスの活用を促進しています。今までは有料のガイドサービスは通訳案内士などの国家資格を持った人しか提供できませんでしたが、その制度は今年から改正されました。その法改正に伴って、これから増加する国家資格を持たないガイドの教育についても検討しているところです。

「AI開発部門」は、実際にマッチングサービスを利用した観光のデータを集めて、より観光客のニーズに合ったおすすめのプランを提供できるAIを開発中です。AIについては、富士通のアクセラレータプログラムに参加して、共同開発をしています。

私はその各部門にも関わりながら、新しいつながりを創るために奔走しています。ありがたいことに、サービスのリリース当初より、大手の保険会社とも提携をしており、万一の時、観光中に起きた怪我などにも対応できています。 日本に訪れる世界の観光客が、日本のよい部分を安心して体験できるように環境を整え、よりよいマッチングサービスを提供していくつもりです。

事業を進めるにあたって、人脈は大切だと実感しています。これまでに出会ってきた人から、たくさんのことを学び、事業のヒントになる情報も受けていると感じます。我ながらとても人に恵まれているとよく思いますね。 人とのコミュニケーションが得意な自分自身がハブとなり、あらゆる業界の人たちをつないで新しいサービスを創っていくことが、私にいちばん合っている仕事なのかもしれません。

これまで出会えなかった人と人とをつないで「WOW」であふれる世界にしたい

中林 幸宏インタビュー04

「WOW」とは、今までの仕組みでは出会えなかったはずの人と人が出会えて、新たな関係が生まれる時に芽生える感動を表しています。

観光客のニーズと、それにふさわしいガイドをマッチングするのが「WOW U」です。

自動車の配車サービスで知られるUberは、一般の人も参加できる新しい配送サービスの仕組みを創り出しました。それによって、どのドライバーにも収入を得られる機会が与えられるようになったのです。

「WOW U」は、地元をよく知る高齢者がガイドとして活躍し、収入を得ることができるような仕組みを提供できるベースを持っています。ですから、「WOW U」が各地域に浸透すれば、60歳までとされていた労働人口が、80歳まで伸びるかもしれません。超高齢化社会で懸念されている労働人口の減少にも、歯止めをかける一助となる可能性があるのです。

東京オリンピックが開催される2020年に向けて、外国人観光客の数は増えていく一方。それを受け入れる体制を整えることは急務となっています。「WOW U」が担うガイドのマッチングサービスが、重要な役割を果たすことでしょう。

2020年を通過点として、これからたくさんの人に「WOW U」を活用してもらい、世界各地のよさをアピールし合い、堪能し合えるような社会になることを願っています。

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