1. 株式会社テーブルクロス 城宝 薫 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社テーブルクロス 城宝 薫 氏

株式会社テーブルクロス 代表取締役社長
城宝 薫
大学3年生の時に株式会社テーブルクロスを設立。飲食店の予約をするとその人数分の給食を途上国のこどもたちに届けることができる社会貢献型グルメアプリを開発しリリースした。
以来、飲食店、協力NPO団体、そしてユーザーの協力によって、累計19万食以上の給食を途上国のこどもたちに届けている。ユーザーはアプリ上で「自分がどれだけ給食支援をしたか」が確認できるので、支援する喜びも感じられるという。途上国への継続した支援と、飲食店の広告費問題の解決という2つの社会問題へアプローチし、アプリダウンロード数は現在40万件を突破。掲載飲食店も約3,000店舗へと拡大を続けている。
テーブルクロス Webサイト

利益の創出と社会貢献が同時にできる文化を創りたい

会社経営をしていた祖父に憧れ、小学3年生より実業家を目指していたという、株式会社テーブルクロスの城宝薫社長。日本のチャリティーに関する考えを変え、利益の創出と社会へ貢献を同時に行うというビジネスモデルを広めることを念頭に、学生起業家として、就職という道を選ばず進み、順調に事業を拡大させている。事業5期目に入り更なる飛躍を目指す城宝薫氏に、起業に至る経緯やメリット・デメリット、今後の事業展開などを伺った。

全てのタイミングが揃い学生時代に起業

幼い頃に訪れたインドネシアで、貧困層のこどもたちの苦労を目の当たりにし、そういったこどもたちへの支援を行いたいという想を持っていました。学生時代に飲食店への広告販売を行うアルバイトをしていましたが、当時飲食店の広告業界に有名な企業は3社ほどしかありませんでした。業界について研究しているうちに、以前の携帯電話業界との類似点に気づき、業界改革と価格競争が行われる可能性を見出しました。そこで、飲食店の広告費とこどもたちへの支援を結びつける事業を思いついたのです。
日本では、社会貢献事業で利益が生じることに疑問を抱く傾向がありますが、利益を生じさせ、継続させていくことによって社会的問題を解決していくことの重要性をアメリカで学び、日本でもこの考え方を広めていきたいと思っていました。そういったことが全て結びつき、起業にあたっての資金調達が可能になったこともあり、「このタイミングだ」と、学生時代に起業しました。

失敗の定義を明白にすることの重要性

「起業前に失敗したらどうしよう」と不安に陥った際、学生時代の先輩から「失敗とは何を指すの?」と聞かれました。確かに私の場合は資金調達も無担保無保証人の融資を受けることができたので、たとえ事業が失敗に終わっても大きな借金を背負うことはありませんでしたし、友人を失うという心配もありませんでした。よくよく考えてみると、人から「事業を失敗した」と思われることが怖かったのです。先輩の言葉から、自分の気持ちの小ささを感じました。
私が起業するにあたって目指していたことは、日本の中で寄付の考え方を変え、利益の創出と社会への貢献を同時に行うということです。これが成し遂げられない場合のみを失敗とみなし、それ以外のことは全て経験として前に進もう、と決心しました。この後、起業にあたってのモチベーションが下がることはなくなりました。

城宝 薫インタビュー01

学生起業家のメリット、デメリット

学生起業家という点で苦労したことはたくさんありました。経験や実績がないのはもちろんですが、当時は親の扶養に入っていたこともあり、収入証明書もないので、オフィスを借りることも複合機をリースすることさえも大変でした。経験も浅く、商談も思うように進まないことも多かったです。
もし、社会経験を積んでから起業していたら、もう少し早く成果を得られていたと感じることもありますが、若かったからこそ吸収も早く、早い時期に多くの経験を積み幅広い世界感を身につけることができたのは良かったと思っています。人からよく「学生起業を薦めますか?」と聞かれますが、「若い時期に起業すること」と「幼いうちから勉強をすること」とは似たような議題であり、一概に早ければ良いというものではなく、人それぞれ来たるべきタイミングで行うのがベストなのかもしれません。

「経営とは何か」を考えてみる

社会的課題の解決であったりお金を稼ぐためであったり、好きなことをするためだったり、事業を行う理由は人それぞれ異なるものです。私にとって経営とは、自己表現の場だと感じました。私の目指すべき社会を形にするために起業し、そして事業を継続させているのです。
会社を経営していると、困難や辛いことは増していくものです。そんなときに心が折れてしまうのは、人間であれば仕方のないことですが、乗り越えていくためには、明白な経営目的を心に留めておくことがとても大切だと感じます。また、会社の規模が大きくなるにつれて「やらないこと」を決めることも重要となっていきますので、何をすべきなのか優先順位を決めて行動に移すようにしています。

企業5期目に入った現在において考えることとは

起業当初は、ゼロの時点でマイナス面ばかりを考えるのは止めようと思い、まずは行動してから考えることを重視していました。5期目に入り、現在では、いかに会社が良い方向へと進んでいくか、昨日の自分を今日の自分が越えられるかを重視して考えて行動するようになりました。些細なことでも少しずつ会社が前に進むよう方向性を定めて考えています。
最近は、在宅勤務や時短勤務も積極的に採用し、働きやすい環境を整えることにも力を注いでいます。場合によっては、こども連れでの出社も可能としており、次回の事務所移転の際には託児所を設けることも検討しています。エンジニア部門では外国人の採用も積極的に行い、従来の形にとらわれず、様々な観点から良いと思うものを積極的に取り入れていこうと思っています。
子育て中のママさんや外国人を採用することはメリットもデメリットもあり、きちんと利益を生み出すためのマネジメントの難しさを感じることもありますが、働き方改革を推し進める意味でも、社会貢献の場を広げながら、利益の創出と社会貢献を同時に行うというビジネスモデルを日本に広めていきたいと思っています。

城宝 薫インタビュー02

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