1. 株式会社Nature Innovation Group アイカサ 代表取締役 丸川照司 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社Nature Innovation Group アイカサ 代表取締役 丸川照司氏

株式会社Nature Innovation Group アイカサ 代表取締役
丸川照司氏
日本と台湾のハーフ。日本の大学に進学したが、興味を感じられず中退し、「新興国の勢いをこの目で見たい」とマレーシア大学に留学。車、タクシー、自転車など、さまざまなジャンルでシェアリングビジネスが浸透していることに衝撃を受ける。もともと、「社会のために何かをしたい」という想いがあったことから、傘のシェアリングを事業化しようと思い立つ
株式会社Nature Innovation Group アイカサ Webサイト

傘のシェアリングビジネスで、雨の日のライフスタイルを変える

アイカサは、1日70円で傘を使用できる、傘のシェアリングサービスである。傘に貼られたQRコードをスマホで読み取り、会員登録すると、傘のロックを解除する暗証番号が送信され使用できるという仕組みだ。傘は最寄りの傘スポットに返却すればよく、借りた場所に返す必要はない。現在会員登録数は5万2千人超。アイカサを借りられる加盟店は約700店(2019年10月1日現在)。傘のシェアリングが当たり前になれば、急な雨のときにビニール傘を購入するという、雨の日のライフスタイルが一変する。

アジアで見た、シェアリングビジネスにヒントを得た

18歳のころ、認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんの本を読んでソーシャルビジネスに興味を持ち、「まだ解決されていない社会問題を解決する仕事をしたい」と思うようになりました。大学では経済学を学んでいましたが、興味が持てなくて退学。新興国のビジネスに興味を持っていたので、マレーシアの大学に留学しました。

マレーシアでは、タクシー、車、自転車、傘までも、シェアリングエコノミーが浸透していてすごく面白いと思いました。その頃(2017年)、メルカリやDMMがシェアリングエコノミーに参入すると報道発表していて、日本でもシェアリングエコノミーが一気に広がる予感がありました。

「どうせなら、だれもやっていないことをやりたい」そこで、まだ日本ではだれもやっていない傘のシェアリングをビジネスにしようと考えました。傘はよくなくすものだし、必要な時に限って持っていなくて、仕方なくビニール傘を買う。そして家にはそんなビニール傘が何本もたまっている。そういう状況を変えたいと思ったのです。

起業の方法など知らなくても情報はいくらでもある

丸川照司氏インタビュー

2018年に、友人たちと3人で起業しました。開業資金は200万円ほど。その後は、ベンチャーキャピタルから出資をいただき増資を行ってきました。

起業についての知識はありませんでしたが、インターネットで検索すれば欲しい情報はいくらでも手に入ります。前述の駒崎さんなど、自分が目指している方向性に近い人の成功体験は参考になりました

アイカサがライフスタイルを変える

アイカサは、LINEで決済情報を登録し、LINEペイかクレジットカードで支払う仕組みです。利用料は1日当たり70円。返し忘れたら1日70円ずつ加算されますが、420円以上は上がりません。もし紛失したら、買い取り申請をして880円を支払えばそれ以上の料金は発生しません。

スマホで会員登録をしてアイカサを利用する仕組みは社内で開発し、傘は中国の工場で生産。アイカサを置いてもらう加盟店は、ひたすら飛び込み営業で増やしていきました。
現在、加盟店は約700か所。およそ7000本のアイカサを置いてもらっています。現在は、東京都内と福岡だけで展開していますが、今後は全国に広げていきたいと考えています。

外出中に雨が降り出したら、傘スポットで傘を借り、止んだら最寄りの傘スポットに返却。再び雨が降り出したらまた借りる。アイカサによって、折り畳み傘を持ち歩くとか、急な雨の日にコンビニでビニール傘を買うといったライフスタイルが変わる。これは新しい文化になると思っています。

現在は、ユーザーの1日70円の使用料が収益になるというビジネスモデルですが、今後は傘自体を広告媒体にすることも検討しています。また、傘を持ったユーザーの消費行動を分析し、O2O(Online to Offline)のマーケティングデータとして活用することもできるのではと考えています

起業に必要なことは、できるという思い込みと実際にスタートすること

丸川照司氏インタビュー

よく、「起業したいけれど何から始めたらいいかわからない」という人がいますが、「絶対にこのビジネスをやりたい」という強い想いがあれば、方法はおのずと見つかるのではないでしょうか。自分で調べて情報を集めたら、とにかくやってみる。うまくいかなかったら別の方法を試して、よさそうだと思う方に向かっていく。その繰り返しだと思います。

失敗を重ねたとしても、とにかく前進していけば、賛同してくれる人や助けてくれる人が出てきて、その人がまた次の人を紹介してくれる。アイカサも、そうやって少しずつ加盟店や会員数が増えていきました。

すべての人に起業が向いているとは限らない

起業にあこがれる人、起業をすればキラキラの人生が開けると思っている人もいるかもしれませんが、そんなに簡単なものではありません。

アイカサのビジネスも、まだまだ成功しているとは言えませんし、3年後も続いているかどうかはわからない。大変なことはたくさんあります。でも、僕は辛いとは思わないし、日々やりがいを感じ、仕事を楽しんでいます。

もし、それを辛いと思う人は、無理に起業しなくてもよいのではないでしょうか。会社員として自己実現をする方法もありますし、個人事業主や、その延長でスモールビジネスをするのでもいい。自分がどんな人生を生きたいのかよく考えて、選択すればいいと思います。

丸川照司氏インタビュー

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