1. 日本の未来企業―次の100年を創る(83)いしい施盤製作所社長・石井貴幸氏

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日本の未来企業―次の100年を創る(83)いしい施盤製作所社長・石井貴幸氏

日刊工業新聞電子版
(2017/4/3 05:00)

  • ものづくり
  • 創業時の状況・工夫

■“人づくり”へ二人三脚

石井貴幸氏イメージいしい施盤製作所社長・石井貴幸氏

【前例なし】

「いばらの道でも道があればましだった」―。いしい旋盤製作所社長の石井貴幸は自身の創業を振り返る。同社は総合プラスチックの旋盤加工を手がける町工場。2011年に創業した新しい企業だが、IT企業のような今どきの企業ではない。石井は「高度経済成長期と違い技術者の独立は珍しい。時代も違う。前例がなく、自分たちで切り開かなければならなかった」と苦笑する。

石井は元々、東京都大田区にある町工場で樹脂を特殊形状に加工する職人だった。10年の冬に独立を決意。横浜の町工場で営業社員をしていた現統括取締役の塚本美千代と二人三脚で創業準備を始めた。「製造業の立ち上げで苦労するのは工作機械の購入。多額の資金を集めなければならない。自分にはない経営の知識を補ってもらった」という。ただ、働きながらの起業は壮絶だった。会社員としての仕事が終わるのが22時頃。半年間、毎日のように2人でファミレスに通い、午前3時頃まで準備作業にいそしんだ。11年8月、いしい旋盤製作所が誕生した。

いしい旋盤製作所社屋イメージ清潔感にこだわった外観
(いしい旋盤製作所社屋)

【技術力と営業力】

同社の武器は石井の圧倒的な技術力。しかし、設立後に威力を発揮したのは塚本の営業力だ。前職で取引していた多くの会社が「塚本にしか頼めない」と考えていたのだ。塚本の独立を知った取引先から次々と注文が入り、設立当初2件だった注文は5カ月間で60件に増えた。細かい部分まで行き届いた営業は今も結果を出し続けており、現在の取引先は300件以上に上る。

社内での一貫対応を目指す同社には、必然的に工作機械が増える。現場が手狭になり、16年に工場を建設し、本社を移転した。

その際に気を配ったのが清潔感だ。近代的な建物を建て、看板を設置。受け付けではロボットのペッパーが出迎える。塚本は「従来の町工場にある3K(きつい、汚い、危険)のイメージを覆したかった。女性はもちろん、若い人が製造業を志しやすい環境にした」と明かす。

【次世代に継承】

そして石井と塚本は、次世代への技術の継承に挑む。「技術を次の世代に伝えないと、技術者は目減りしてしまう。モノづくりの楽しさを伝えたい」と石井。塚本は「自分が仕事を頑張ることで、女性でも製造業で活躍できることを証明したい」と意気込む。2人の“人づくり”に向けた新たな二人三脚は、スタートを切ったばかりだ。

(南東京・門脇花梨)

【企業プロフィル】

▽代表=石井貴幸氏▽所在地=東京都大田区南六郷2の26の3▽資本金=1000万円▽設立=11年(平23)8月

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