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英・米国に並べるか 都内開業率、24年めど10%台目指す

日刊工業新聞電子版
(2018/3/26 05:00)

  • 東京都
  • TOKYO創業ステーション
  • 創業支援・取組み

外国企業の都内誘致や、子育てが一段落した女性や創業意欲のある若者の開業支援など、さまざまな産業施策とあわせ、2024年ごろまでに都内開業率を英国や米国並みの10%台実現を狙う東京都。そのためには新たな担い手を増やすことが重要だ。地域活性化や地方創生につながる取り組みなど、都内で展開される創業支援に関する最新の動きを追った。(大塚久美)

■補助事業を実施/資金調達まで一貫支援

藤沢久美氏イメージ東京都補助事業「女性・若者・シニア創業サポート事業」の事例を紹介する藤沢久美氏
(2月17日=日経カンファレンスルーム)

創業前か、創業5年以内の人を支援する都の補助事業「女性・若者・シニア創業サポート事業」は、18年度は安定的な資金供給を継続するために必要となる融資原資約16億円を追加して実施する。

地域創業アドバイザーによる経営支援やセミナー、信用金庫・信用組合を通じた低金利・無担保の融資による資金調達までを一貫支援するもので、4月には事業実施5年目に入る。1月末時点で支援件数は累計1308件、融資実績は約79億円にのぼる。

これまでの創業事例としては、40代女性によるIT技術者の経験を生かし「東京の魅力を外国人観光客に発信するアプリの開発」などがある。都では今後、社会的課題解決ができるソーシャルビジネス分野の創業支援にも力を入れ、地域に根ざした創業の促進を後押ししていく。

一方、外国企業の誘致も進んでいる。都は19日、3分野ある東京都アクセラレータプログラムのうち、IT分野の「ニューテックビジネスキャンプ東京」ビジネスプラン発表会を開き、選定された8社が登壇した。都内での起業はもとより、海外の優れた技術やノウハウを国内企業へ移転することも目指している。

8社のうち、これまでに画像認識技術で写真1枚で製品や素材、ブランドなどを高い精度で識別するマーロンテクノロジー(中国)が実際に都内で法人登記した。「近く、もう1社が登記予定している」(政策企画局調整部渉外課)という。

17年度はフィンテック、ブロックチェーンを含めた3分野から8社ずつ計24の外国企業を選定・支援した。

アフターフォローは、赤坂と丸の内の2カ所にある外国の企業・外国人向け相談窓口の「ビジネスコンシェルジュ東京」で支援を続ける。「18年度は金融とそれ以外の2分野にまとめ、それぞれで10社ずつ、計20社を支援する計画」(同)だ。

■創業ステーション/「身近な起業」後押し

左からレフアクローゼットの平口遵さん、ナチュリーの生田めぐみさん、ココンの浅野亜土子さんイメージ自由が丘商店街にオープンした東京都チャレンジショップ「創の実(そうのみ)」。
(左から)レフアクローゼットの平口遵さん、ナチュリーの生田めぐみさん、ココンの浅野亜土子さん

東京・丸の内に17年1月に開業した「TOKYO創業ステーション」の施設利用状況も好調に推移している。都が運営する1階「スタートアップハブトーキョー」の来場者数は、2月末時点で延べ4万5725人。メンバー登録数は1万1209人。イベントやセミナーを473回実施するなどほぼ毎日開催し盛況だ。東京都中小企業振興公社が運営する2階「創業ワンストップサポートフロア」の利用者状況は、登録者数2305人。そのうち5割弱を女性が占め、生活関連サービスなど「身近な起業」の実現を後押ししている。支援を受けた人のうち約50社が起業済みだ。27日には同所で開業1周年記念イベントも開き、プランコンサルティングなど簡易相談会も行われる。

開業を希望する人に、商品販売の機会を提供する支援も始まった。東京・自由が丘商店街に17年12月にオープンした東京都チャレンジショップ「創の実」は、選出された店舗出店経験ゼロの3人の若者・女性がそれぞれ4坪ずつの店を開き、最長1年間挑戦できる。

手作りアクセサリーショップ「Natully(ナチュリー)」の店主、生田めぐみさんは「ここでは客層がマダム系で、大ぶりのネックレスがよく売れている」という。バス通りに面した好立地にあり、中国人観光客も多い。まだまだ計画通りの売り上げに届かないものの、3人とも経験を積み、次の本格展開に向けた準備を進めている。

都では18年度中に多摩地域にもチャレンジショップを新設する計画で、商店街活動の担い手となる若手や女性を輩出し、商店街の活性化へとつなげていく構えだ。

■日本公庫が共催セミ/働き方多様化へ地方と“つながり”

ファミーリエ(香川県高松市)社長の徳倉康之社長イメージ香川県にゆかりのあるゲストとして、ファミーリエ(香川県高松市)社長の徳倉康之社長が登場

2月21日、日本政策金融公庫四国創業支援センターは、SENQ霞が関(東京都千代田区)で四国若者会議(香川県高松市)との共催セミナー「東京で考える 香川で自分の仕事を“つくる”ということ」を開いた。今のうちから『関係人口』を東京で増やし、多様な交流を通じて参加者同士がつながることで将来的に移住創業やサテライトオフィス(働き方改革)、地方と都会で半々ずつ働くといった副業、働き方の多様化を目指すものだ。ファミーリエ(香川県高松市)の徳倉康之社長ら香川県にゆかりのあるゲストを迎え、香川に移住して創業した先輩の体験談を聞くなど交流した。徳倉社長は、参加した20―40代の約30人に向かって、「地方では仕事の種類を増やすことが重要になる。自分だけが成功するというのはあり得ない。自分と周囲の最大公約数を考えて仕事をすること」など、地方での働き方についてヒントを語った。

当日は香川県の担当者ほか、日本初のクラウドファンディングサイトを立ち上げたREADYFOR(東京都文京区)の富澤由佳地方創生事業部マネージャーらも参加した。進行役は、地域創生と関係人口の切り口から主に四国地方で若者たちを多く集めるイベントの企画・運営で実績を持つ瑞田信仁四国若者会議代表理事が仕切った。瑞田代表理事がSNSで発信した情報を得て参加した人も多く、自分自身の将来のことを真剣に考え、集まっていた。その後もSNSなどを通じて緩やかにつながっている。

「このような場を今後も設け、生き方の選択肢として、地域で活躍できる人材マッチング、引き合わせ、きっかけづくりにしたい」(金丸幸義日本公庫国民生活事業本部四国地区統轄室長)。後日、徳島県にゆかりのある人を大阪府内で集めた、同様のイベントも実施した。日本公庫は全国組織であることから、引き続き全国各地で交流の場を設けることで、移住創業などのきっかけづくりを支援していく方針だ。

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