1. 株式会社ファンクション 本間 麻衣 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社ファンクション 本間 麻衣 氏

株式会社ファンクション 代表取締役社長
本間 麻衣
2013年に子どもから大人までのシックなランジェリーブランドで起業し、株式会社ファンクションを設立。百貨店でのポップアップ開催やフランス・パリでの展示会出展を経て、オーストリア・ウィーンのSTEFFL百貨店での販売実績を持つ。その後、ファッション提案型商品の提供より社会意義と持続可能な事業を考え、事業をピボット。災害時の女性の下着と洗濯についての課題を解決するプロダクト「レスキューランジェリー」の企画、開発、販売を行っている。

簡単に洗えて快適な下着を開発し、災害の「備え」に

抗菌・防臭効果のある竹布で作られ、少ない水で洗濯ができるインナーウェア「レスキューランジェリー」。災害時に活躍するアイテムとして注目を集め、防災やビジネス関連の賞を多数受賞している。この商品を開発したのは「世の中に役立つものを作りたい」と起業した株式会社ファンクションの本間麻衣社長。業界経験がゼロのまま会社を立ち上げ、材料調達から販路開拓までを一人で行い、その思いを実現させた。6期目に入りさらなる高みを目指す本間社長に、起業のきっかけや商品開発までの経緯、起業を目指す人へのアドバイスを伺った。

「ブラジャーが欲しい」という娘の言葉で起業

本間 麻衣インタビュー01

「欲しいものがないなら、自分で作ろう」……これが起業のきっかけでした。娘に初めて「ブラジャーを買ってほしい」と言われたとき、Webサイトや百貨店で下着を探してみたのですが、買ってあげたいと思えるデザインがありませんでした。大人の女性へと成長していく娘が、身に付けることで感性を育めるようなインナーウェアを作りたいと思い、起業を考えるように。
当時の私はセールスプロモーション会社に勤務しており、アパレル業界のことを全く知らないばかりか起業に関する知識もゼロでした。しかし、テレビ番組のADや映像の仕事に携わった経験から、調べることは得意だったため、徹底的にリサーチし、これまで築いてきた人脈をフル活用して準備を進めました。そして構想から1年余りでインナーウェアの自社ブランド「N.SENS」を立ち上げ、インターネット販売を開始。その後、国内外の百貨店、展示会に出展できるまでになりました。

社会意義のあるプロダクトを作りたい

本間 麻衣インタビュー02

ところが、実際に起業してみるとすぐ、新たな思いが湧き上がりました。それは「世の中の役に立つプロダクト(生産品)を作りたい。社会意義のある仕事をしていきたい」というものです。
根底には、2011年の東日本大震災での経験があります。私は都内在住だったため直接被害にあったわけではありませんが、近くのスーパーから商品が消え、小さな子どもを抱えて食料やおむつを探し回りました。そのときに感じた「備え」の大切さや、災害に遭ったときに女性や子どもが社会的弱者となってしまう問題を、起業した自分だからこそ解決することはできないかと考えるようになったのです。

そこで思いついたのが、災害時に女性の体と心をケアできるようなインナーウェアの開発でした。避難所では食料品や最低限の生活用品はあってもインナーウェアが手に入らず、洗濯の負担を減らすために紙の下着で過ごすことがあると聞きました。「快適に過ごすことができる下着がないのなら、自分で作ろう」。以来、路線を変更し、女性用のショーツ、ブラトップ、布ナプキン、洗濯用洗剤と専用バッグがセットになった「レスキューランジェリー」の製作、販売に特化するようになりました。

受賞はお世話になった人たちへの恩返し

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「レスキューランジェリー」は竹の繊維で作った布を使用し、防臭効果や抗菌作用が期待できます。専用バッグの内側が防水加工になっているのも特徴の一つ。洗濯バケツ代わりに使え、逆さに吊るせば内側に洗濯物を干すこともできるので、避難所でも人目を気にせず下着を乾かすことが可能です。また、洗剤には洗浄力が高く環境負荷の少ないものを選び、使う人と環境への優しさにこだわりました。

2014年1月に第1号のサンプルが完成し、販売を開始。2015年に減災産業振興会主催のグッド減災賞優秀賞をいただいたことをきっかけに広く知られるようになり、その後も環境省主催の第5回グッドライフアワード実行委員会特別賞環境アート&デザイン賞、第30中小企業優秀新技術・奨励賞などたくさんの賞をいただきました。発売当初はまだ世の中に知られていなかっただけに、受賞は大きな励みになりました。しかしそれ以上に、これまでお世話になってきた人たちに恩返しができたことがうれしいです。一人で始めた起業ですが、プロダクトの開発、融資において多くの人から力添えをいただかなければ、思いを実現することはできなかったと感じています。

資金集めには補助金やクラウドファンディングを活用

本間 麻衣インタビュー04

開発当初から、いくつもの難題に突き当たりました。「災害時に役立つ下着」というアイデアはあっても、目に見える形にしなければ材料を集め、発注することができません。そこで手芸店に行って糸や布を探すところから始め、家庭用のミシンで試作品を製作。縫製工場は何十軒も電話をかけてお願いをし、やっと協力を得ることができました。
商品が形になった後は本当に必要とされるものにしたいと、2015年に出身地の茨城県常総市で起きた大規模水害、2016年の熊本地震、2017年の北九州北部豪雨の被災地に出向いて無償で配布し、実際に使った感想を取り入れて改良を重ねました。

さらに大変だったのは、資金集めです。資本金は自分で捻出しましたが、実績がないことに加え、当時シェアオフィスを利用していたことも不利な材料となりました。そこで、起業を支援する補助金やクラウドファンディングを積極的に活用したのです。これらを利用することは、プロダクトを知ってもらう機会を創出し、資金を調達できるという“一石二鳥”の効果があると思います。

多くの人に会い、「とりあえずやる」の精神で

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起業に向けて大事なことは、当たり前かもしれませんが、事業計画書を綿密に立てることでしょうか。融資や補助金の申請にも必要ですし、うまくいかなかったときのことを想定しておけばリスクを減少できます。ですから、事業計画書をできるだけ多くの人に見せて意見を求めることをおすすめします。ロールプレイングゲームのように、人に会う度に次のステップに向かえるアイテムをゲットしていく。私はこの繰り返しで、自分と会社を成長させてきたように思います。

さまざまな人とのつながりができたおかげで展示会に呼んでもらったり、テレビ出演の話がきたりと多くのメリットがありました。また、ビジネスコンテストへの応募もよかったと思えることの一つです。同じ志を持つ人たちとの出会いは、大きな刺激になります。そして「とりあえずやる」ことの大切さを教わりました。「トライ&エラーを繰り返さないと、事業は腐ってしまう」。これは、仲間たちから学んだことです。

女性の働き方に貢献できる会社を目指したい

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「レスキューランジェリー」は女性向け製品が中心でしたが、2018年12月12日~25日の2週間、伊勢丹新宿店メンズ館で、初めて男性向け製品の販売を行いました。また今後は、災害時だけでなく旅行時や普段使いなど広く使用できるように展開していく予定です。将来の目標はIPO(新規公開株式として投資家に売りに出し、証券取引所に上場すること)。そのためには事業を少しずつ拡大し、一緒に仕事をしていく仲間を増やしたいです。私は、4人の子どもを持つシングルマザーでもあります。同じ立場にある女性には特に、働く場を提供できたらと考えています。

社名のファンクションには「役割」の意味があります。女性が社会の一端として心豊かに暮らせる未来を目指し、よりよいサービスとプロダクトを提供したいと考え名付けました。女性の働き方はもっと多様で、自由であるべきです。生活費を得るために働くだけでなく、仕事をしながらキャリアを積めるよう手助けができたらと考えています

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