1. アディッシュ株式会社 江戸 浩樹 氏

東京都創業NETインタビュー

アディッシュ株式会社 江戸 浩樹 氏

アディッシュ株式会社 代表取締役
江戸 浩樹
東京大学卒業後、2004年に株式会社ガイアックスに入社し、Webサイトの企画開発業務に従事。2007年、インターネットやソーシャルメディアにおけるコミュニケーション上の課題を解決するためのソーシャルメディアモニタリング事業、ネットいじめ対策事業、ソーシャルアプリ向けカスタマーサポート事業を立ち上げる。2014年、立ち上げた3事業を分社化する形でアディッシュ株式会社を設立し、代表取締役に就任。以来、インターネット上のリスク対策サービス、チャットボットの運営などを展開する。2011年より海外事業としてGaiaX Asia Corporation(現adish International Corporation) を設立し、同社代表取締役に就任、国内だけでなく多言語海外展開にも力を入れている。
アディッシュ株式会社 Webサイト

ソーシャルメディアの問題を解決しインターネット社会に貢献

学生時代のインターンを経てWebベンチャーの世界に飛び込んだ江戸氏。インターネット内でユーザーが作り上げるものに価値を見出すと同時に、ソーシャルメディアが広まるにつれて発生するネットいじめや出会い性犯罪などに危機感を持ち、ソーシャルメディアサポート事業を立ち上げる。ユーザーにとっても運営者にとってもよりよい場所を提供しインターネット社会全体に貢献するアディッシュ株式会社の事業を展開する江戸氏に、起業の経緯や仕事観、アディッシュのこれからについて話を聞いた。

インターネットを居心地のよい場所にしたい

学生時代はバイオ系の研究をしていました。卒業後の進路を選択するにあたって、そのまま研究職に進むか、インターンをしていたWebベンチャーに進むか、ビジネススキルをつけるために商社に進むかという三択で悩んだんです。その当時自分の心を決めかねて、色々な方にお会いして相談したりアドバイスを受けたりしたのですが、自分が尊敬していた複数の方が「Webベンチャーに進むべきだ」と背中を押してくださったこともあり、自分でもじっくり考えた末Webベンチャーの道を選びました。

入社してしばらくはWebサイトの企画開発に携わっていたので、コンセプトやレイアウトを提案する仕事をしながら、自然といろいろなサイトを調査していました。もともとインターネットが好きで、ユーザーが作り上げるものには価値があると思っていました。でも、それは何もしないと壊れるということも感じていました。ソーシャルメディアが広がると、出会い系犯罪被害やネットいじめなどさまざまな問題が起こります。そのような課題を解決することでインターネットを通じた社会全体に貢献できるのではないか、インターネットを居心地のいい場所にできるのではないかと思ったんです。それで、2007年にアディッシュの前身となるソーシャルメディアサポートの事業を社内で立ち上げました。

事業規模が徐々に大きくなったということもあり、2014年、ガイアックスで事業を共に行ってきた約50人を連れ、分社化という形でアディッシュ株式会社を設立しました。ガイアックスは内部で事業を立ち上げてカーブアウトさせていくというスタイルをとっていましたので、ある意味ベンチャーキャピタルから資本調達するのと同じイメージでの起業でした。社内でプレゼンをした結果それが認められて3000万程度を用意し、その後外部資本を調達して運転資金としました。会社のミッションは事業部長だったメンバーと一緒に作りました。僕だけの会社ではありませんから、トップダウンではなく、それぞれから上がってきたものをアップして、一緒に会社を作っていきたいという想いが強かったからです。その想いは今でも変わりません。

江戸 浩樹インタビュー01

プランよりも現実、世の中に提供し続けることが大事

独立してからは、計画と現実とのギャップを感じました。プランを作るのは大変ですが、プランを作ったからといってその通りになるわけではありません。プランは所詮プランでしかないんです。これから起業を考えている方は、事業内容を紹介する準備をされると思いますが、それはどうしても自己満足に陥りがちです。準備ではなく実際にプロダクトとして世の中に提供し続けられるかどうかが問題なんですよね。始まりでしかないものが自己満足で完了してしまうと、その後がより厳しくなる。現実を作り上げなければならないということに苦しみ続けるので、そのあたりをしっかり踏まえて、現実を見据えて、実際にプランを実行に移し、変化させ続けるとよいと思います。

そんな僕も、起業したばかりの頃はかなり大きなプレッシャーを感じていました。社員が50人、アルバイトを入れると200人くらいのスタッフがいたので、自分が切り詰めれば済むわけではなく、数字を上げないと明らかに会社が潰れてしまいます。1年目に分社化前と同じやり方をしていては赤字ですから。しばらくはキャッシュを調達でまかなっておいて、どれくらいまで投資できるのか、どれくらいのものが必要なのかをきちんと見極めるようにしていました。

よりよい方向を目指し、第三案を大切に

僕は、仕事でもプライベートでも、第三案というのを大事にしています。A案とB案があるとしたらAを進めてもBを進めても100%の結果ではない、そんな矛盾だらけなのが仕事だと思っているんですよね。どちらの案でもないけれどある意味理想的に向かうアイディアがあると信じています。代表をやっていると様々な問題が持ち込まれますが、なるべく片方からでなく双方から聞いて、どちらでもない選択をするということが多いですね。

初めてモニタリングのためのシステム開発を手がけたときも、お金がなかったので「システムがないと売上がたたない」「システム開発にはお金が必要」という話で揉めたことがあったのですが、僕はそこで「システム開発もしてお金もとる」という、どちらでもない選択肢を提案しました。そうすれば両方解決しますから。何とか、通常数十万いただいている初期費用を数百万いただけるクライアントを見つけて、実際にシステムを作りました。もちろんそのシステムは納品しましたし、そういう条件でクライアントを引っ張ってきたんです。追加でお金を借りることはできませんし、切り拓くしかない。最初のころはそんなアクロバティックなこともやっていましたね。

それから、人とのつながりも大切だと思っています。就職するときにWEBベンチャーをすすめてくれたのは、自分にとっては尊敬すべき大切な方たちでした。また、社会人になって2年ぐらいの間、数字が上がらず精神的に落ち込んでいた時期があったのですが、学生時代にお世話になった方から「人に対して感謝する気持ちを持つように」とアドバイスをいただき、言葉遣いやふるまいを見直したことによって営業成績が上がったという経験もあります。他にも、偶然知り合いから流れてきた議事録の中に面白い発言をされた方がいたのを見つけ、すごく強引にお願いして会う機会を作ってもらったこともありました。その方はアディッシュの社外取締役になっていただいている方なのですが、僕が強引に会いに行かなければ今そういうポジションにはついていただいていないと思うんです。最初だけでいいので、一歩飛び込んでみることで自分にとって大切な人とめぐり会えるかもしれません。

江戸 浩樹インタビュー02

アイディアはあたためず、まず始めよう

今後も、弊社が強いソーシャルメディア、シェアリングエコノミー、アプリというジャンルは引き続いてきちんと注力し、フィンテックを含め次に伸びてくるジャンルをウォッチしながらインターネット社会をよりよくしていきたいと思っています。また、自動化やAI、RPAといったテクノロジーの波を捉えることで、これまで人の目で行ってきたところを自動化するという部分に取り組んでいきたいです。今の業務のやり方をベースにするのではなく、AIなどで可能な部分は率先してシステム化していかなければと思っています。

そして、ヨーロッパも視野に入れ、海外展開にもっと力を入れていく予定です。今はどちらかというと国内企業の海外展開を支援しているのですが、海外の企業がクライアントとして増えていくぐらいのグローバル化を目指したいですね。せっかくフィリピンに子会社があるので、システムの自動化を日本だけでなく多言語で展開していきたいと考えています。

今の世の中は動きが早いので、これから起業を考えている方は、アイディアをあたためるのではなくどんな形でもよいので始めて、始めてから修正した方がよいと思いますね。いかに素早く転びながら回れるかが大事です。ある意味実験だと思って、なるべく小さく実験し、なるべく小さく失敗するという気持ちで起業に臨むとよいのではないでしょうか。

江戸 浩樹インタビュー03

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