1. 難関インスタグラムのAPI審査を突破した設立2年の新進ベンチャー

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難関インスタグラムのAPI審査を突破した設立2年の新進ベンチャー

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(2017/4/11)

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SnSnap・西垣代表インタビュー「落とされ続け直接行った方がいいと」

SnSnapの西垣代表イメージSnSnapの西垣代表

「インスタグラム」などソーシャルメディアを活用した写真プリントサービスで急成長しているSnSnap(東京都渋谷区)という会社をご存じだろうか。約2年前に設立されインターネット販売などから実店舗に顧客を誘導するオンライン・ツー・オフライン(OツーO)のマーケティング事業で大手ブランドなど向けに急成長している。昨年にはプライベート・エクイティ・ファンドが全株を取得、制約の少ない経営支援と資金を受けサービスを強化中だ。

代表の西垣雄太氏は若干27歳。大手企業でも認可を得ることが難しいといわれるインスタグラムのアプリ連携仕様(API)も取得。インフルエンサーマーケティングに精通する新世代の起業家はどのようなバックグランドと未来を見据えているのか。

きっかけはApple Storeから

― 学生時代から起業という考えはありましたか。

「ありました。大学在学中にApple Storeで働いていたことと、留学をしたことが大きいです。ちょうどiPhoneが出たり、そこで100年に1回くらいのデジタルの変化を目の当たりにして、自分もあんなものをつくってみたいと思っていました」

― 卒業して最初にアップルの日本法人に入ったんですよね。

「はい。マーケティングに興味がありましたし、グローバルという軸でもアップルはトップだと思っていたので。日本法人の仕事はどちらかというとブランディングに近かったですね。会社にいれば、いろいろなチャンスがあるかもしれない。でも若い時にはそんなにチャンスはないのかな、と思っていました。そうしたら、周りの同世代で起業する人たちがいっぱい出てきて、自分もスタートアップ寄りの進路に変わっていったんです」

― そこですぐ起業ではなくて。

「マクロミルという会社に入ったんです。SurveyMonkeyに近いQuestantというアンケートツールや、今はなくなってしまいましたけど、ミセコレという食べログみたいなサービス、あとantennaというサービスを始めるということで、『アップルにいたんでしょ、興味があったらどう?』ということになって、第二新卒で入社して、事業戦略室というところで新規事業をみさせてもらっていました。ダウンロード数の管理などもやっていましたね」

― そこでの経験を今ふりかえると。

「活きてますね。マーケッターの人がどういうデータをみたり、どういうリサーチをするのか、どういう風に新商品を出していくのか、効果測定をしていくのかがわかりました。当時、新規事業側も見ていたので、広告出稿がどういう風にキュレーションメディアについてくるのかもわかりました。ブランドの広告出稿の凄さとかも」

広告がよりインディビデュアルに

― 今は結果的にO2O(オンライン・ツー・オフライン)のサービスになっていますけど、どういう思考で考えたんですか。

「通常の雑誌、新聞が読まれなくなり、キュレーションメディアだ、ブログだ、youtube だ、という感じで個人の媒体力が確実に高まって、それで広告メディアがよりインディビデュアルになってきていると。Facebookに次いでInstagramも出てきて、そこのマーケットは大きく、お金になるな思っていたんです」

「一方で、メディア側はたくさんあり過ぎて大量にコンテンツが出回り、自分が好きな情報をメディアから探すのって大変だなと、という感覚を持っていました。僕らの世代が接する時間が多いのは、チャットするLINEとか友達があげているInstagram、Twitter、FacebookなどのSNSです」

「ブランド関連で仕事をしている僕の友人からSNSをなかなか活用できていない、という話を聞いていました。来場者からどれくらい拡散されたかというKPI(重要指標)もあって大変そうで。1度、そのイベントに行ってみたんですけど、運営者が『ハッシュタグつけてTwitterでつぶやいて下さい』とか『イベントの写真をSNSにアップして下さい』とやっているんですけど、参加者には何のインセンティブもないのにやらないですよね」

「イベント運営者はリアル体験のビジュアルをネットに上げてもらいたい、という希望があることははっきり分かりました。アパレルとかのレセプションで、フォトブースでプロのカメラマンに撮ってもらう一方で、参加者は自分の携帯でも撮ってそれアップしたり。Instagramを使ったマーケティングはもう海外は当たり前にやっていて、自分もある程度の知識は持っていたので、最初、画面に映し出すサイネージとかに投稿した写真を流し込んだらおもしろいと考えたんです」

イベントイメージプリントアウトされたカードをイベント来場者に配布(ジバンシィのイベント)

「プロのカメラマンが撮ったもの印刷して、それをプレゼントしていたりもしていたので、そのまま、プロのカメラマンが撮ったものを、サイネージに流したり、投稿してもらったり、クーポン付の写真をプレゼントすればすごく流れいいのに、と思いました。デジタルだけより、アナログクーポンの方が参加者に新しい体験価値が提供できるはず、と考えたんです。どれくらいのビジネスになるか分からなかったのですが、現在のCTO(最高技術責任者)で、当時の友達だった平沼(SnSnap共同創業者兼CTO 平沼真吾氏)に話して作ったのが#SnSnapのβ版でした」

― 平沼さんと知り合ったのは。

「ハッカソンですね。平沼と最初に出会ったのは伊藤園さんの『茶ッカソン』ではお互い違うチームだったんですけど、懇親会で意気投合して。後日こういうものがあるんだけど、って話したら、一緒にやっていこうということになって土日に会うようになっていきました」

アナログだからこその熱量がある

― 起業しようとして動き出したのは。

「そうですね。2015年5月のPayPalさんのハッカソンで、準優勝したんですね。そのとき評価した人たちから『一番よかったよね』とか、『シンプルだけどビジネスになりそう』と言われたのがあったのと、なんとなく25歳までに1回チャレンジしたいと思っていたので、僕だけパーンと会社をやめてがっつりコミットしました。平沼には土日とかに作ってもらったりして、必死に動いていたら、最初はMicrosoftさんやFlying Tigerさんとか大手が使ってくれたんです」

― このサービスがいけると思ったのは。

「リリースした時はテック系の利用を想定していたんですが、同じ時期に色々なアパレルやファッションなどのブランドさんたちに食いついてもらったときですかね。そこで、ブランドさんがリアルイベントに対して困っているなと思ったのと、うちの見積もりで、そのままいける企業さんもいることも知って、これはおもしろいなと。それで2カ月目から黒字化したんです」

 「何万枚写真が撮れる時代になっても、アナログだからこその熱量があると思っていて、こんなにデジタルが普及していても、ライブなどに多くの人が行くじゃないんですか。一方で、デジタルは世界中に共有できるし、今まで難しかったものを表現できるようになったと思っています。そういうデジタルとリアルの境目がなくなりつつある時代に生きている中で、そこをうまく活かした体験値の高いサービスにしたかったんです」

― O2Oに興味がそもそもあったのですか。

 「ガジェットが世の中に出たりしていて、そういうものは作ってみたいなと思っていました。そこにInstagramの伸びもあったので」

直接Facebook本社に乗り込む

難関インスタグラムのAPI審査を突破した設立2年の新進ベンチャー2

― Instagramの特徴は。

「Instagram、Twitterは匿名で上げやすい。でもTwitterは文字先行だから電車の遅延ですらも上げられるんですよね。ネガティブなものもあがりやすい。その分、拡散もしやすい。一方でInstagramは画像先行型なので、ネガティブなキャンペーンものは少ないんです。自分の好きな旅行とかをあげて、ハッシュタグのキーワードで遊んでいる感じ。ハッシュタグをもとに情報交換ができるメディアですね」

― Instagramをビジネスに使う承認をとるのはとても厳しいと聞きますが。

「大変でしたね。留学時代やAppleの時のツテとかに紹介してもらってサンフランシスコまで行って、直接、本国の人ともコミュニケーションしてアドバイスをもらいました。日本の中の何億個のアプリケーションの中の似たり寄ったりの1つだと思われると、落とされるじゃないですか。これは直接行った方がいいなと」

― 行ったのはいつですか?

「2016年の6月です。前年の11月にAPI変更の話がはじまって、そこから情報が入るところは集めつつ、申請をあげていたんですけど、落とされ続けていたんです」

― 落とされたときにここがダメというところは教えてくれるんですか?

「書いてくれる担当者と書いてくれない担当者がいるみたいで、まったく書かれていない場合がほとんどなんですよ。だから何を直せばいいかわからない」

― Facebookでお会いした人はどれくらいのレイヤーの人ですか?

「Instagramの担当の人で結構上の人でした。責任者に近い人でした。そこでうちが日本で持っている事例を見せたら、すごい反応がよくて。F8カンファレンスに合わせて行ったのですが、カンファレンス中は2日間フルコミットで名刺交換しまくっていました。話すべき人は別にアポイントを取って、カンファレンス後に打ち合わせをさせてもらって。4日間、ほぼ動いていましたね。1週間後くらいに日本に帰ってきたら承認があさり降りて」

ファンドから「一緒に成長していこう」

― スケールしていく中で資金調達とか、事業を買いたいという話もあったと思いすが、その選択肢の中からファンドのニューホライズン・キャピタル(NHC)をを選んだのは。

「色々な要因があるんですけど、まずサービスとしては僕らの方針でいくと、あんまり色をつけるサービスではないなと思っています。東京ドームはキヤノンさん、サンリオとかディズニーは富士フイルムさん、スカイツリーはエプソンさんとが公式スポンサーになっているので、特定のプリンター・OAメーカーと組むと他と商売がしずらくなります」

「うちを買いたいって会社は広告代理店も含めてあったんですけど、柔軟に対応していくほうがあっているなと。利益優先で、サービスがイケてないと意味がないと思っていて、サービスのスケーラビリティをあげるには、普通に融資してもらうことが大事だと思ったんです。それが1つ目の理由です」

「2つ目に、なんでこのタイミングなのかというと、やっぱり(自社購入している)プリンターを増やせばサービス受注できるのに、筐体の台数が足りない理由で売り上げが出せないことがあったんです。ハロウィンやクリスマスのようにイベントは同じ日に全国で同時に開催していくので、関東で予約が埋まってしまって、飛び込みで問い合わせがくるんですけど在庫がなくお断りしたり」

「あとは縁があったってことですね。安東(泰志)社長をはじめNHCの方々が、自分たちのチームとサービスの可能性をとても評価して頂き、『一緒に成長していこう』とおしゃって頂きました」

「広告って大事だよな」

― 最近、話題になったディー・エヌ・エーのキュレーションメディア問題をどう見ていますか。

「大きな転換点になると思っています。昔、なんでいいテレビ番組とか映画ができていたのかを考えると、そこにちゃんといい広告がついていたからだと思っているんです。メディアやコンテンツの質が担保されていた時代ってあったじゃないですか」

「今の時代の2ー3分の動画が何億円にもなるって結構異例なことだと思っていて、誰でもクリエイターになれるっていうのはありつつも、大量に色々な情報が出てきているだけで、クオリティーの精査とかが出来ていないと思うんです。そういうのにちょっと違和感がありました。これを機にコンテンツの質を担保するようになると思っています」

― デジタル広告市場は今後どう変化するでしょう。

「スマホ画面になって、広告はノイズのようにはなったんですけど、例えば安い運賃で電車に乗れるのも、広告のおかげという側面もあります。世の中、昔から広告で回っているのは変わっていなくて、ネイティブアドとか広告を出さないメディアが評価されている部分もありますけど、『広告って大事だよな』って思っています。広告も広告ではないコンテンツも、質の高いものが増えていく流れにシフトしていくでしょうね」

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