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クローズアップ/都、多様な創業支援展開ー24年めど、開業率10%台

日刊工業新聞電子版
(2017/11/27 05:00)

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「TOKYO STARTUP GATEWAY」の決勝大会イメージ「TOKYO STARTUP GATEWAY」の決勝大会

東京都は2024年までに英国・米国並みの開業率10%台実現に向け、さまざまな創業支援、起業家の育成支援を展開している。社会的課題を解決するためのソーシャルビジネスや事業分野を組み合わせた新しいサービスの創出など、さまざまなアイデアを持つ起業家たちの活躍が期待されている。東京都が特に力を入れる創業支援の事業内容について紹介する。(大塚久美)

■起業家掘り起こし・事業化

創業・起業支援メニューは、起業家の掘り起こし、掘り起こしから事業化、起業後の成長促進、海外展開支援といった、それぞれの段階に応じたものを展開している。

【17件が法人化】

次世代アントレプレナー育成プログラム事業「TOKYO STARTUP GATEWAY」は、14年度に開始した起業家の掘り起こしが狙いの支援事業だ。エントリー数の推移をみると、初年度448件だったが、17年度は1360件と大幅に増加。3年間で17件が法人登記に至っており、60人以上の若者が起業・事業化した。

18日に開かれた決勝大会では、ファイナリスト10人が質疑応答合わせ8分間ずつプレゼンテーションを行い、事業プランを競った。最優秀賞は小幡重人さんが選ばれた。小さな島々に、ヘリコプターを含む小型機を交通インフラとして普及させ、誰でも小型機とパイロットをシェアできるプラットフォームを目指すもの。iPadアプリ「フライトプランニングツール」として日本と東南アジアでの展開を考えている。小幡さんは、「新規インフラコストがほぼかからない。情報を一番持っている会社になりたい」と、実現に意欲を語る。

16年度に東京・丸の内で開業した「TOKYO創業ステーション」は、初期の希望段階から創業までをワンストップで支援する。1階のスタートハブ東京には気軽に起業相談に訪れてもらい、キッズルームを併設するなど女性起業家への支援も厚くしている。2階には東京都中小企業振興公社があり、都と提携する東京TYフィナンシャルグループ、東京信用保証協会、日本政策金融公庫が専門家相談員を置き、融資相談を受け付けている。

他の自治体と共催するイベントや民間事業者によるセミナーの実施回数も含めるとオープンした1月からの10カ月間で300回以上にのぼる。開設以来、10月末時点での会員登録は1万38人(うち、女性3641人)、来場者はイベント参加者含め、のべ3万2397人。「当初目標の2万人をすでに超えており、手応えを感じている」(都産業労働局商工部創業支援課)。創業を目指す仲間と発想から事業化まで体験できる少人数制3カ月間プログラム「トーキョードカン」も無料で提供しており、現時点で2件が法人として起業済みだ。

キックオフイベントイメージ10月30日に開かれた「X-HUB TOKYO」キックオフイベント

■起業後の成長促進

【短期集中型】

一方、起業後の成長の促進という観点からの支援も活発化してきた。5カ月間の短期集中型育成プログラムを無料で提供するアクセラレーションプログラムの青山創業促進センター(ASAC、東京都渋谷区)では5期目がスタート。年間2回の各期10チーム程度の募集に対し、100を超える応募があるほど人気が高いプログラムで、「TOKYO STARTUP GATEWAY」のファイナリストやセミファイナリストで有望と見込まれた起業家の卵たちも送り込んでいる。

一番の特徴は、投資や共同事業の実施を訴求する「デモデイ」を卒業式で開催する点だ。地域金融機関の担当者らの前でプレゼンテーションを行い、早めに夢の実現、成功に一歩近づける。資金調達などを通じて過去4期で計39社が卒業し、活躍している。

17年度からはプログラム修了生を対象としたブース入居(全13社分)も始まり、今月から3社が入居している。プログラム受講生に対し、先輩起業家として相談に乗るなどの条件で、都心の好立地に格安で入居できるようになり、ますますの活躍が期待される。

小池都知事イメージ「APT Women」第1期プログラムキックオフイベントであいさつする小池都知事

■女性VB・海外展開支援

【ロールモデルに】

女性ベンチャーの支援事業も本格的に始まった。10月から第1期プログラムがスタートした女性ベンチャー促進事業「APT Women」は20人の受講生が12月まで全12回の講義を受けるほか、ワークショップ、ピッチ会、個別メンタリングを受け、事業に磨きをかける。この中から10人を選抜し、18年1月から2週間程度、米国ニューヨーク市へと派遣する海外派遣プログラムも予定する。9月29日に開かれたキックオフイベントには小池百合子都知事も登場。「日本の最大の未利用エネルギーは女性です。ビジネスの場は結果が全て。世界にうって出るような大きな気持ちで挑戦して、みなさんにはロールモデル(成功事例)になってほしい」と、受講生20人に対して発破をかけた。なお、18年度は、米シリコンバレー、シンガポールをターゲットとした支援プログラムを予定している。

ベンチャー企業の海外展開支援については、グローバルベンチャー創出プラットフォーム事業「X―HUB TOKYO」を10月30日にキックオフイベントを開き、立ち上げている。採択した5社は、米国東海岸進出に向けて事業計画のブラッシュアップや英語による交渉・プレゼンテーション指導、現地法制度の講義など事前支援プログラムを受講している。ほかにも、毎回50―200人を対象にした海外ベンチャーによる資金調達カンファレンス、海外で成功した経営者によるセミナーなども隔週で実施。現在、18年1月中旬から3月下旬にかけて実施予定の「ドイツベルリン・ミュンヘン進出支援コース」への参加者を12月1日まで募集中だ。今後、1社でも多くのベンチャー企業が東京から世界に向かって成功するために、都はこれら支援事業を継続して実施していく。

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