1. アップシードビーンズ株式会社 塚﨑 康弘 氏

東京都創業NETインタビュー

アップシードビーンズ株式会社 塚﨑 康弘 氏

アップシードビーンズ株式会社 代表
塚﨑 康弘
自身の不登校に至った経験から教育についての疑問や葛藤を抱き、独自の授業スタイルで復学支援・進学支援を行う「学習支援塾ビーンズ」を設立。主に不登校や勉強嫌いな生徒のための学習塾を運営する。子どもたちの悩みに寄り添い、不登校だった子どもたちを難関校や都立チャレンジスクールへの合格へ導く実績を積み上げている。
学習支援塾ビーンズ 公式サイト

「学び治しの授業」で 子どもたちの「芽」を伸ばす教育を

「なぜ勉強するのかわからない」「集団生活になじめない」。成長過程の子どもたちは、少なからず悩みを抱えている。その悩みを解決できないまま学校へ通うことが難しくなり、進学の機会を逸する子が増加している。
一人ひとりに向き合い、心のケアをしつつ具体的な未来を考える場を提供する「学習支援塾ビーンズ」。創業4年目を迎えた現在、入塾希望者は後を絶たない。創業支援施設を活用しながらスタートを切ったビーンズは、独立した高田馬場の教室からさらに広い場所への移転を予定している。活躍の場を広げる塚﨑代表に話を聞いた。

苦悩が多かった学生時代

私自身、学校生活は苦しく、厳しい授業や、先生の教育方針などに抵抗を感じながら、受験勉強へと巻き込まれていきました。その反動か、念願の早稲田大学に入った途端、不登校という状況に陥ってしまったのです。多額の学費を払ってくれている親に申し訳ないと思いながら、通学できずに引きこもる自分を責め続けていました。

大学2年生で復学できたきっかけは、社会人との交流や学生団体の運営をする機会に恵まれたことでした。様々な授業、社会人との出会い、アクティブに活動している同年代に触発を受け、社会の広さや学問の面白さに気づくことができ、なんとか卒業できた、という感じでした。今になって思うと半分笑い話ですが、家に引きこもっていた当時は「世界で一番僕が不幸だ」くらい思いつめていました。ただ、ビーンズへ通う子どもたちの気持ちに寄り添い、ビーンズの創業を決意できたのは、この大学時代の経験があってこそだと思っています。

塚﨑 康弘インタビュー01

不登校に対する学校教育の限界に気づく

大学を卒業して就職をしましたが、体調を崩して退職し、九州の実家に戻ることになりました。そこから約2年間、ニートに近い状態でした。復職にあたっては、教えることが好きだったので、家庭教師を選びました。生徒の中には、不登校で勉強についていけなくなった子や、学校や塾で自信を失ってしまった子もいました。
家庭教師の仕事をしていくうちに、目的もわからないまま「勉強させられている」という状況で、もがき苦しんでいる子どもが多いことを実感したのです。自分自身も経験した苦しみだったので、とても共感できました。科目勉強に偏る既存の教育では、科目内容は教えることができても、「なぜ勉強が必要なのか」「自分が将来に向けてやりたいことは何か」といった本来、私が子どもたちに考えてほしい内容を伝えきれないという限界を感じました。

そこで、自分が教育者として何かできるのかを考えたのです。結果、生徒の学ぶこと自体への疑問や、進路選択時の不安に向き合う機会を設けながら勉強を教えるという手法を模索し始めました。そうして家庭教師を続けていくうちに、不登校から復学・進学していく子どもたちの姿を見ることができるようになり、私自身がやりたい教育・塾としてのスタイルを少しずつ確立していきました。
「心のケアをしながら、自分の未来・やりたいことを見つけるワーク、具体的な職業観の育成なども含めた学習塾を作り、不登校や勉強嫌いの子に『学び治しの授業』をしていこう」・「もう一度東京で勝負してみよう」と、上京を決意しました。

塚﨑 康弘インタビュー02

徒手空拳で起業を目指し 所持金5万円で上京

上京は決意したものの、私が故郷でニート生活を送っている間に、それまでの友人や知人とのつながりはだいぶ少なくなっていました。上京するにあたってFacebookを立ち上げても、友達はほんのわずかでした。事業を立ち上げるには人脈と自己資金が頼り、とよく言われます。その点、私はまさに徒手空拳。東京へ向かった時の所持金は5万円。数少ない高校時代の友人宅や大学時代の先輩宅に仮住まいさせてもらいながら創業を目指すというのは、数ある起業ストーリーの中でも割とレアな部類かもしれません。

上京後、家庭教師のアルバイトをしながら、起業準備のための作業スペースを探しました。
もちろん資金がないので、賃貸は無理。そこでコワーキングスペースを何か所かあたっているうちに、偶然、慣れ親しんだ高田馬場の駅前にあるコワーキングスペースを借りられることになりました。

次は生徒の募集です。しかし、まだ東京での実績も評判もない状態で生徒を集めるのは大変でした。塾のサービス内容については、上京する前にウェブサイトを作っており、宣伝できたのですが、保護者の立場から考えて、どこの誰ともわからない業者に我が子を託すのは心配です。悩んでいるところに「新宿区高田馬場創業支援センター」のインキュベーション・マネージャーの方から「まずは事業者としての信頼を獲得する必要があるのでは」という助言を受け、新宿区高田馬場創業支援センターに籍を置くことになりました。そのためには、区への書類提出と面接を通過することが条件になるので、自分が「どんな塾を立ち上げ、どんな授業を提供したいのか」あらためて言葉にまとめていきました。

塚﨑 康弘インタビュー03

創業支援センターで多くのことを一から教わった

人脈や資金、経理の知識など、創業のためのリソースをふんだんに持った上で起業する人もいますが、そういう人たち以外でも「このサービスで社会をよくしよう」という強い思いや、ずば抜けたスキルを持っている人たちが、もっと起業へチャレンジしやすくなると面白いだろうなと思います。

自分が起業する内容の方向性を固めたり、起業を後押ししたりというセミナーはたくさんあります。しかし、具体的に何をどうすればいいかを教えてくれる場所や機会は多くないと思います。例えば助成金や創業時に利用できる低利の融資があることは分かっていても、その申請のための書類や資料は作れない人も多いと思います。かくいう私も「教育に対する強い思い」はありましたが「事業計画書の書き方」など、起業に関する基礎的な知識が全くありませんでした。私にとって幸いだったのは創業支援センターのインキュベーション・マネージャーから、事業計画書の書き方を一から細かく教えていただけたことです。言いたいことを図で示すのか、表で説明するのか、字体はどれを使うべきなのかなど、まさに手取り足取り教えていただきました。
その方の勧めで「TOKYO STARTUP GATEWAY 2014」へ参加し、そこでもひたすら「自分はどんな塾を立ち上げたいのか」を考え、事業計画に落とし込んでいきました。今思えば、この時にビーンズの目指す方向性がきちんと固まったと思います。助成金の申請についても、わからないところはすぐに相談してやり方を教わり、東京都からの助成金を受けられるようになりました。
子どもの学習支援と同様に、創業支援も「私と同じ起業のプロではないけれど起業を目指す人」ひとりひとりに伴走し、独り立ちを支えるという点でとても大切なものだと思っています。

塚﨑 康弘インタビュー04

「学び治しの授業」を より多くの子どもたちへ届けたい

多くの指導や支えでスタートした学習支援塾ビーンズは、今、スペースが足りなくなるほど、毎日子どもたちでいっぱいです。「不登校対策・チャレンジスクール対策といえばビーンズ」という信頼の声もいただけるようになりました。授業スペース拡張のため、近々、引っ越しを予定しています。

教室移転後は、科目勉強や自習をしている子たちと特別授業をしている子たちが、一緒の空間で交流したり、復学や進路の悩みを講師も交え子どもたち同士で話し合えたりする、よりオープンな環境にしていきたいです。イメージとしては、子どもたちが様々な人と出会い、自分の進路を考え、学んでいく・・・さながらコワーキングスペースといった感じでしょうか。様々な人が集うビーンズの教室で子どもたちが、多くを学び、伸びていってほしいと思います。

「学び治しの授業」では、子どもたちに「自ら目的を立てて、自ら挑戦することができるチカラ」を身につけてもらっています。その他にも、子どもたちに職業観や進路について考えてもらえるよう、様々な業界で活躍されている社会人による特別授業を実施しています。授業で使っているワークなどの授業コンテンツは、不登校でなくても進路に悩む多くの子どもたちに役立つと考えていますので、さらに多くの子どもたちへ、届けていきたいと思います。将来的には、ビーンズの生徒たちだけではなく、行政や学校、他の進学塾といった教育機関とも連携し「学び治しの授業」を広めていけるように尽力していきたいです。

塚﨑 康弘インタビュー05

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