1. 株式会社HERBIO(ハービオ) 代表取締役 田中 彩論理 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社HERBIO(ハービオ) 代表取締役 田中 彩論理 氏

株式会社HERBIO(ハービオ) 代表取締役
田中 彩論理 氏
子どもの頃は、人と接することが苦手。人と違うことをすることが好きだったという田中さん。早くから、世の中の役に立ちたい、自分は社会にどう貢献できるかと考えていたという。高校生のときに祖母を癌で亡くし、人の命を救う道に進みたいと考え始めた。臨床心理の道を志し、大学、専門職大学院へと進んだ後就職。その後、祖父を亡くしたことが起業の大きなきっかけとなる。
株式会社HERBIO(ハービオ) Webサイト

ITの力で体調を管理し、健康・快適・豊かな人生をサポートしたい

株式会社HERBIOは、簡単に基礎体温を測ることのできるウェアラブルセンサーと健康アプリ「HERBIO」を開発。現在は、医療機器メーカーや製薬会社、行政などと共同研究を行ったり、研究目的でウェアラブルセンサーの貸し出しやデータ提供等を事業の中心としているが、将来的には、一般消費者に向けて、医療機器としての販売を目指している。
社名はHerとBioを組み合わせた造語。Her=女性が作る、Bio=バイオヘルスまたは伝記を意味している。

祖父の死と、自身が感じた不便さがビジネスの種に

自宅介護をしていた祖父が急激な発熱の末、亡くなったことに大きなショックを受けました。体温をずっと測っていれば、もっと早く祖父の不調に気付けたかもしれないと後悔が残りました。一方、私は重いPMS(生理前に起こる心や体の不調)に悩まされていて、基礎体温を測ろうとしたことがあるのですが、大変面倒で手間がかかり、長続きしませんでした。

この2つの経験から、体温計測による体調管理の重要性と、既存の体温計の不便さが、ビジネスの種になるかも、と思いつきました。

とはいえ、そこからすぐに起業に結び付いたわけではありません。しばらくは、人材会社、教育系ベンチャーなどで働く普通の会社員でした。ところが、教育系ベンチャーで働いていたときに、新規事業の立ち上げを経験し、自分でも起業してみたいという気持ちが芽生えました。

ハードウエアの知識がないという弱点を克服し、退路を断って起業

ウェアラブルセンサーの原型となるアイデアで応募したビジネスコンテストに優勝し、起業の決意が固まりました。でも、そのときもまだ起業には至りませんでした。というのも、デバイスを開発するにあたって、私はハードウエアの知識が全くなかったので、一度、ハードウエア系の会社に就職して、一から学ぼうと思ったのです。一見遠回りのようですが、知識もないのにビジネスを起こしても、誰も信用してくれないと思ったからです。小さなベンチャー企業に就職し、ハードウエアの知識だけでなく、人事、総務、経理など、さまざまな仕事を経験させていただきました。これは起業してからとても役立ちましたね。

1年半ほど働き、起業するために退職。将来のことを考えると不安でしたが、会社に籍を置きながら週末起業みたいなやり方は、「片手間にやっているんでしょ」と見られ信頼を得られないし、自分自身も潔くないなと思って、すっぱり会社を辞めました。

2017年9月に創業。最初は3人でスタートしました。そのうち1人は、「体温について研究している人に来てほしい」と思って、かたっぱしから論文を検索してたどりついた人。まだ大学院生でしたが、スカウトしました。「田中さんがそこまで言うなら一緒にやります。」と言って、起業したての、まだ先行きがどうなるかわからないような会社に来てくれました。彼女の専門知識はHERBIOの大きな強みですね。

現在、HERBIOのメンバーは7人。小さな所帯ですが、チームで仕事をしていく上で私がいつも心がけていることは、みんなの意見に耳を傾けること。私一人では何もできない、みんながいるからこその会社だと思っています。それぞれが専門知識を持ったメンバーで、私がわかることなんてたかが知れている。それぞれの意見を聞くことで勉強になることも多いし、スタッフが「やりたい!」ということには基本的には反対しないですね。

田中 彩論理 氏インタビュー

HERBIOが世の中に提供していること

私たちが開発したウェアラブルセンサーは、おへその近くに装着するだけで、睡眠中でも煩わしさを感じることなく、深部体温を継続的に計測することができます。
深部体温とは脳や内臓など体の内部の温度のことで、これまで深部体温を測るのは簡単ではありませんでした。深部体温を継続的に測定することで、体調の変化や睡眠の状態、心の健康状態も把握することができ、不調の早期発見につながります。皮膚温(体の表面の温度)だけでは計測しづらい熱中症の兆候も、深部体温の変動を見ることによって管理することができます。現在は、企業向けに研究素材として貸し出しを行うなど、BtoBのビジネスを行っていますが、医療機器としての認証を受け、一般消費者向けに販売することを目指しています。特許登録も目標です。

体温管理という簡単な方法で、多くの人の健康維持に貢献できればと思っています。

資金集めが最大の苦労

節約してコツコツと貯めた自己資金で起業しましたが、事業を継続するにあたって、資金調達には常に苦労しています。VC(ベンチャーキャピタル)からは、ビジネスとして成功するのか、医療機器として売れるのかなど厳しく追及されます。女性であることも信用を得るにはネックとなることがありました。彼らを説得するためには、データを集め理論武装しなければなりません。でも、そのおかげでよりビジネスプランが洗練されていきました。

融資してくださる銀行が見つかったり、補助金をいただけたり、運にも恵まれました。新型コロナウイルスによって、体温への関心が高まったことも追い風になりました。

会社を運営していると、日々大変なことに出くわします。でも、辛い、辞めたいと思ったことはないですね。そもそも、不調に気付かないで祖父を亡くしてしまったという後悔が始まりです。もう二度と大事な人を亡くしたくないし、他の誰にも同じ思いをさせたくないとの思いがあり、何があっても乗り越えようと思えます。

ロールモデルなんかいらない。使命感が原動力

田中 彩論理 氏インタビュー

失敗するのが怖い、そう思って起業に二の足を踏んでいる人に言いたいのは、起業をしようがしまいが、人はだれだって失敗する可能性があるということです。

でも、失敗って、他の人にはできない貴重な経験です。そう考えると、失敗も自分の重要な資産なんですよね。私の母はよく言います。「はじめて子どもを産んだときは、母親も初めての経験。子どもだけでなく母親も、いっしょに失敗しながら成長していくんだよ」と。私にはまだ子供はいませんが、会社も同じだと思うんです。会社もスタッフも私も、失敗をしながら一緒に成長していけばいいと思っています。

「ロールモデルがいない」という悩みをよく聞くのですが、私にとって、ロールモデルはそれほど重要ではありません。ロールモデルがいるからがんばれるわけではない。自分が何に使命感を感じているか、自分がなぜ、これをやりたいのか。それがすべてです。
それさえあれば、何があってもがんばれるのではないでしょうか。

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