1. 株式会社ガーベラ 代表取締役 南 美帆 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社ガーベラ 代表取締役 南 美帆 氏

株式会社ガーベラ
南 美帆 氏
大学卒業後、東放学園映画専門学校へ進学。在学中から、映画やドラマの現場の制作に参加。専門学校卒業後はフリーランスの制作として仕事に従事。AP、AD、プロデューサーを経験し、2015年制作会社を設立。解散後の2016年角川大映スタジオに入社。営業職としてさまざまな映像作品に関わった後、2021年3月に退職。2021年11月に株式会社ガーベラを設立。
株式会社ガーベラ Webサイト

映像作品を世の中に届ける現場をプロデュース。人と人とのつながりを原動力に

映像作品には欠かせないプリプロ&ポスプロ専門の制作会社

映像作品の制作は3段階に分かれています。脚本や絵コンテの制作、キャストの選定など映像作品をつくるための準備作業をプリプロ(プリプロダクション)、その後にプロダクションと呼ばれる撮影期間に入って、撮影が終わったら撮影後のテープ素材をもとに音の編集や色調整といった編集を行うポスプロ(ポストプロダクション)です。ガーベラはこの撮影期間の前後であるプリプロとポスプロをメインに、関連各所との交渉や調整を行いながら、作品が完成するまでをプロデュースしています。
特にポスプロは作品を見ていただける状態にするための作業なのでとても重要なのですが、その仕上がりを左右するのは、プリプロの段階できちんと準備を行ったからなんですよね。業務自体は映像業界ではスタンダードなもので、昔から行われてきたのですが、これまで専門で行う会社はありませんでした。専任の担当者をつければ人件費が発生します。重要な仕事だけど、制作チームの誰かが兼任するなど身内で何とか回している業務だったんです。

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大切な人たちと、ずっと一緒に仕事をしたい

私は東放学園映画専門学校に在学中から映画やドラマの制作部に参加してきたので、20代の頃から映像業界にいます。起業のきっかけは、2016年9月に入社した角川大映スタジオを退職したことです。角川大映スタジオには撮影スタジオとポスプロの施設があって、両方の営業を担当していましたが、ある時部署異動の話が出たんです。でも私は現場に関わり続けたいという思いが強く、これは退職するしかないと思って2021年3月に退職しました。
予期せぬタイミングで退職が決まったので何をしようかと悩み、お世話になった方に相談しまくったんです。そうしたら「ポスプロが得意なんだからやってみれば」と言われて、なるほどと思いました。最近は映像作品の数が一気に増えて、どの現場も人不足でした。プリプロとポスプロを分業できたら、もっと作品に集中できるという感覚は私にもあって、やってみようと思いました。
スタジオにいると年間で1,000人くらいの方にお会いする機会があって、今後も一緒にお仕事したいと思う方とたくさん出会いました。ところが映像業界の暗黙のルールにぶち当たる出来事があって、この人たちとこれからも一緒にお仕事をするには自分が独立するのが最善だと気づかされ、ガーベラを設立しました。角川大映スタジオに入社する前に会社を立ち上げていた時期もありましたが、その時も起業が目的というよりは、会社のほうが社会的信頼も得られるだろうという程度でした。今回も必要に迫られてというか、残された選択肢が起業だったという感覚ですね。

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起業支援や相談、TCICが後ろ盾になった

今日はTCIC(東京コンテンツインキュベーションセンター)で取材をお願いしたので、入り口の壁に映像作品のポスターが貼ってあるのをご覧になったと思います。ここに入居が決まった時に、壁一面を私たちが関わった映像作品のポスターで埋め尽くそうと決めました。設立から1年を待たずに目標を達成ことができ、もっと大きな目標にすればよかったと思いました(笑)。
立ち上げ時のメンバーと起業の相談をしていて、事務所が必要だという話になりましたが、そもそも起業しようと思っていなかったので何の情報もありませんでした。それで調べてみたらTCICのWebサイトにたどり着いたんです。そのタイミングが当時木曜日で、翌週の月曜日が入居者募集の締め切り日だと知り、大急ぎで連絡してインキュベーションマネージャーの担当者さんに面接していただいたのが金曜日。色々なタイミングが重ならなかったら、今のような形にはなっていないかもしれませんね。起業するにあたって行政書士の先生を紹介して頂いたり、相談もできました。TCICが東京都の施設なので、銀行の口座をつくるにしても信用にもつながったと思います。

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一つの作品が生まれる過程に立ち会う喜び

撮影した映像にクリエイティブが加わることで、作品を観ていただく方に伝わるシーンが生まれ、作品として成立していく過程を見られることが、この仕事の面白みだと思います。反対に難しさは、一つとして同じ作品がないということです。
例えば2022年秋のドラマで話題になった『silent』は、角川大映スタジオ時代から知っているプロデューサーさんに誘っていただいた作品ですが、『silent』の仕上げの仕方が、そのまま他の作品で通じるかというとそうではないのです。作業としては同じです。でも監督やスタッフが変わると、やらなければいけないことは少しずつ、全部変わるので臨機応変さが求められます。昨今はコロナ禍で撮影スケジュールが飛ぶことも多くて、そうなった時に、じゃあこういう対応をして切り抜けましょうといった提案が即座にできないといけないし、交渉や調整の連続を大変だと思ったら続けられません。でもそれが私にとっては何よりも楽しいんです。

人間関係はコピーできない

私が担当している仕事を制作チーム内で担うこともできるのに、わざわざ人件費を払ってまで依頼してくださっているわけです。制作メンバーに入れるだけの価値があると思っていただいているからこそですし、逆に私が依頼いただいた方に求められているもの以上の何かを返し続けたいと思って取り組んでいます。これまで現場でお会いした方々が、「南さんが仕上げをするなら安心」と言ってくださってお仕事の依頼がくることも多く、人とのつながりが本当に大事な仕事だと思います。人と人とのつながりで成立する職種だから、私の仕事を引き継いでいけるメンバー探しと育成は大きな課題です。
人と人との関係性はコピーできません。でもメンバーが増えないと、より多くの作品に関わることができません。先ほども言いましたが、作品によってやり方が違うので、経験値を増やしていくには、関わる作品の数を増やすしかないんです。しかし私は一人しかいないので、物理的に対応できないことも増えてきました。現場には私にとって人材育成の先輩となる方もいらっしゃるので、相談したりしながらメンバーを集めていきたいと思っています。それが本当に大好きな映画づくりから離れないことにもつながるので。

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起業を目指す方へのメッセージ

私は映像業界の現場に関わり続けるという、やりたいことがはっきりとしています。
やりたいことがある、だからそのやりたいことを諦めるという選択肢はないですし、仕事をしていて大変なことはあっても、その大変なことを乗り越えてやりたいことを続けるためにはどうしたらいいのかしか考えていません。
やりたいと決めたことがあるなら、簡単に諦めないことが大切だと思っています。

記事内の創業・成長支援プログラム

東京コンテンツインキュベーションセンター

「コンテンツ産業が集まる中野区で、入居者へのワンストップ支援」
アニメを中心とするコンテンツ産業が集まる中野区という立地で、常駐支援スタッフが、事業化支援やビジネス戦略モデル支援、資金調達やアライアンス先紹介ビジネスマッチング、知的財産管理などを入居者へのワンストップの経営支援を実施します。

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