1. WAmazing株式会社 代表 加藤 史子 ⽒

東京都創業NETインタビュー

WAmazing株式会社 代表 加藤史子⽒インタビュー

WAmazing株式会社 代表
加藤 史子 ⽒
慶応義塾大学環境情報学部卒業後、1998年に株式会社リクルート入社。「じゃらんnet」、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げなど主に新規事業開発を担当。観光による地域活性を推進する「じゃらんリサーチセンター」に異動後は、「雪マジ!19」、「Jマジ!」など「マジ☆部」を多数展開。国や県の観光関連有識者委員や、講演、研究活動を行う。2016年7月、「日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に」をビジョンとするWAmazing株式会社を創業。
WAmazing株式会社 Webサイト

訪日観光客という新しい人口を生み出すことで、日本の地方創生に貢献する

本当にやりたいことは何なのかを自問自答する日々

私は前職リクルートという会社が大好きだったこともあり、最初は独立したいとは思っていませんでした。そんな私が起業することになったきっかけの一つに、子どもの成長があると思います。私はリクルート時代に2度の産休育休を取得していますが、1回目の産休育休から職場復帰した2008年に自ら志望して「じゃらんリサーチセンター」に異動しました。じゃらんリサーチセンターは国内旅行に関する調査や研究を通して、地方の活性化に寄与することを目的とした組織です。仕事内容も魅力的でしたが、2008年からリクルート初の在宅勤務を導入していて、子育て中だった私には理想的な環境でもありました。2010年に2回目の産休育休を終えて職場復帰した後に管理職に就き、さらに仕事に打ち込みました。しかし、子どもたちに手がかからなくなってくると、私はこれから何をしたいのかなと考えることが増えました。

WAmazing株式会社 代表 加藤史子⽒インタビュー

地方創生に取り組む観光事業者を支えたい

じゃらんリサーチセンターで観光振興に関わっていく中なかで、19 歳はリフト券が毎日無料とした雪マジ!や、それを他領域にも展開しマジ☆部を立ち上げました。若者と地域をマッチングして国内の観光市場の縮小に歯止めをかけたいと思っていましたが、少子高齢化のスピードが早く「市場拡大は難しい。維持が精いっぱいだ」という事実も認めざるを得ませんでした。また外資に押され気味だった日本の観光市場を本来のポジションに戻すために観光事業者を支援できる事業を立ち上げたいと思うようになりました。そこで着目したのが、拡大傾向にあったインバウンド市場です。
社内で新規事業コンテストが行われていたので、インバウンド市場を見据えた事業プランを作成して応募しましたが採択されませんでした。リクルートのような大企業は多くの社員、豊富な資金に恵まれていますが事業の数も多いのです。そこで経営は「選択と集中」を行います。当時、リクルートにとって自分が実現したい事業は投資領域ではありませんでした。観光による地方創生をライフワークにしたいという自分の思いを再確認することにもなりました。起業するしかないと思いながらも大好きな会社は離れがたい。起業する覚悟ができるまで、1年くらいずっと悩んでいましたね。

事業を遂行するために、企業の財産となる人材集め

日本政府は2008年に観光庁を発足させて観光立国になることを目指してきたわけですが、2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」で、2030年に6,000万人の訪日外国人、国内消費額15兆円を目指すと発表しました。巨大な成長産業になることが見込まれる観光市場に参入していくには一人では心もとないと、まずは仲間を集めることから始めました。その時に声をかけたのが創業メンバーになった4人です。
2016年7月に創業するまでの間、リクルートで働きながら、時間を見つけては会社のビジョンや、自分たちが目指す事業の規模などを何度も話し合いました。宿泊施設やアクティビティ、交通チケットなどを検索・購入できるサービスや、無料SIMカードを日本の主要空港に設置した受取機で提供する訪日観光客向けのアプリ「WAmazing」などインバウンドプラットフォーム事業の構想は、この段階でしっかり固まりました。創業時は自分も不安だし、周囲の人が何かとアドバイスしてくれます。そこで迷いが生じて、ビジョンからブレてしまうことも少なくありません。あの時に十分に話し合ったからこそ、今もブレないでいられるのだと思います。

WAmazing株式会社 代表 加藤史子⽒インタビュー

コロナの蔓延で事業休止に追い込まれて

2016年7月に創業して2週間後に、最初に無料SIMカードの受取機を設置していただけることになる成田国際空港にプレゼンに行きました。リクルート時代にお付き合いのあった方に紹介いただいて機会をいただいたのですが、資金調達もエンジニアの確保も、受取機の製造も、全部これからだったので気後れし、何とも心苦しいプレゼンでした。ですがそこで「やってみよう」と言ってくださった方がいたおかげで、2017年2月に成田国際空港に受取機を設置することができ、そこからは次々に設置してくれる空港が増えました。
ところが新型コロナウイスルが蔓延し、インバウンドプラットフォーム事業を休止せざるを得なくなりました。売上は一気に低下し、社員を守らなければと無我夢中でコスト削減と資金調達を進め、さらに自社のネイティブスタッフによる翻訳サービスや、自治体や観光協会などの支援を行う地域観光 DX 事業を立ち上げるなど、できることは全部やりました。

APT Womenで得たネットワークが支えに

APT Womenに参加したのは、古い知り合いから参加してみないかと声をかけてもらったことがきっかけです。2018年9月からプログラムがスタートし、経営知識やマーケティング、資金調達など経営者に必要な知識を学びましたが、私にとっては人脈やネットワークが広がり、愚痴をこぼせるような起業家仲間を得られたことが宝になりました。例えばコロナが蔓延し始めてすぐにAPT Womenの仲間が連絡をくれてアドバイスをくれたり、翻訳を発注してくれるなど本当にありがたかったです。
人とのつながりの大切さを実感することにもなったコロナ禍を何とか乗り切り、2022年7月からインバウンドプラットフォーム事業を再開しています。インバウンド市場はこれから盛り返しますし、移民政策をとっていない日本では、消費の担い手を得るには観光から入るしかないでしょう。私はインバウンドを旅行者というよりも新しい人口だと捉えています。日本の少子高齢化に対して、観光を通して新しい人口を創出することで貢献していけるよう取り組んでいきたいです。

WAmazing株式会社 代表 加藤史子⽒インタビュー

起業を目指す方へのメッセージ

「炭鉱のカナリア」という言葉があります。これは、まだ起きていない危険や、目では感知できない危険を知らせる人、または状況を意味しています。 昔、イギリスとアメリカの炭鉱員が地下に降りるとき、行列の先頭がカナリアのカゴを持って炭鉱に入ったそうです。スタートアップには様々な危機が襲いかかります。だから、常にアンテナを張って情報収集を行い、少しでも早く危機を察知する力が大事だと思っています。いちはやく危機を察知し、行動に移すことができれば、ダメージを最小化できます。生き残ることができれば、会社の財産である人材を守れる可能性も高くなります。特にスタートアップは日本国内だけでなく海外の情報も収集して、危機を察知する力を養っていくといいと思います。
起業しなければ得られなかった喜びもたくさんありますが、起業すると日々いろいろなことが起きるので、ちょっとやそっとでは諦めないモチベーションが大事になります。起業する前になぜ起業するのか、起業して何をやり遂げたいのかを自分との対話で何度も確認してみてください。

記事内の創業・成長支援プログラム

Acceleration Program in Tokyo for Women「APT Women」

APT Womenは、スケールアップを目指す女性ベンチャーに対し短期集中型育成プログラムを提供することで、スケールアップに必要な経営知識やスキル、それらを共有するベンチャー企業同士の繋がり、更に事業展開に欠かせない協力者・支援者(ベンチャーキャピタル、メディア、大企業等)とのネットワークの獲得を支援します。

PAGE TOP