1. 株式会社find 高島 彬 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社find 高島 彬 氏

株式会社find
高島 彬 氏
2013年オリックス株式会社入社。環境エネルギー分野、オープンイノベーション分野に従事。勤務中に共同創業者である代表取締役COOの和田龍氏と知り合い、共に起業することを約束。2021年12月に株式会社find創業。2022年8月に京王電鉄株式会社にて落とし物クラウド「find」の実証実験を行い、10月に採択。同年6月ASAC第14期生に採択される。
株式会社find Webサイト

落とし物が見つかる、落とし主にも企業にも感謝があふれるサービス

100年近く変わらなかった落とし物対応

落とし物クラウド「find(ファインド)」は、落とし物を見つけるためのプラットフォームです。落とし物を保管する場所や企業側が、落とし物の画像と情報をスマートフォンアプリ「find scan」で登録します。落とし主からチャットでお問い合わせがくると、データベースとなっている「find search」で検索をかけて該当する落とし物を見つけ、対応します。
落とし物を拾ったら交番に届ける人もいるでしょう。明治時代に交番制度ができているので、その仕組みは100年近く変わっていません。しかし落とし物は基本的に拾われた場に預けられるので、落とし物を一番保管しているのは企業です。落とし物対応は収益を生むわけではなく、また作業も複雑で、積極的に改善しようと思われてこなかった部分でした。
落とし物対応は、落とし主対応を行うフロントオフィスと、落とし物を管理するバックオフィスの業務に分かれますが、フロントとバックが連携しているサービスはありませんでした。知人から京王電鉄の担当者さんを紹介されてサービス内容を説明したところ、findの「落とし物が必ず見つかる世界へ」というビジョンに強く共感いただき、採択に至りました。

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きっかけは落とし物で困った自身の体験

会社員時代に共同創業者の和田と仕事を通じて出会いました。2人ともチャレンジ精神が強くすぐに意気投合し、いつか2人で起業しようと約束しました。人生をかけて取り組めるテーマを見つけたくて、起業する1年ほど前から2人でアイデア出しを続けていたのですが、これだと思えるテーマが見つからず、どうも踏み切れずにいました。
そんな時に私が出張先で落とし物をしたのです。落とし物をした日に会食に使った飲食店や、電車にバスとホテルと何カ所も電話をして確認しましたが、見つかりません。飲食店などは電話もなかなかつながらず、とても焦りました。忙しい時に落とし物の問い合わせに対応するのは大変だということも理解できますが、落とし主に対する扱いを冷たく感じ、悲しく思いました。
そんな自身の体験からアイデアが生まれました。すぐに和田に連絡すると「いいテーマだ」と反応があり、findの原型を考え、私たちは落とし物を見つけるサービスで起業することにしました。

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クライアントは本当に得られるのか。不安との戦い

クライアントにも出会い、今でこそ起業までの歩みを話しているといい話のように聞こえますが、ゼロから1にするまでが本当につらく、不安な時期でした。
私が会社を辞めてfindに集中するようになったのが2022年4月。それから京王電鉄さんで8月に実証実験を行って、10月に京王電鉄さんとReGACY Innovation Groupさんが主催する「KEIO OPEN INNOVATION PROGRAM」に採択されました。そこでやっと最終的な導入が決まりました。
京王電鉄さんで採択されるまでは、クライアントはいないし、無収入。何もできない時間が長かったので、空港に出向いてインバウンドの観光客に英語で作成したチラシを配って、旅行中の落とし物を探すコンシェルジュをしますと声をかけたり、50か所くらいのゴルフ場にコールドメールをしましたが、反響がありませんでした。京王電鉄さんで採択いただけなかったらどうなっていたかと思います。

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ネットワークの強化になったASAC

起業して間もないときに、ある起業プログラムに参加しました。その起業プログラムは、受講したらどんな形であれ必ず起業することが条件だったので、私も退路を断つ気持ちで参加しました。そこで同期だった人からASAC(青山スタートアップアクセラレーションプログラム)を紹介されたのです。これはいいプログラムだと感じて第14期に応募しました。
参加して良かったことは、ネットワークが強化されたことです。起業家仲間との横のつながり、複数人ついてくださったメンターの存在、そこから紹介を受けて実務につながったこともあります。起業家に重要な情報もいろいろと提供してもらえるのはASACでネットワークができたからだと感謝しています。

株式会社find 高島 彬 氏

家以外での落とし物はfindですべて見つかる

私たちの事業は鉄道会社からスタートしたこともあり、まずは鉄道会社にfindを広めていきたいと考えています。東京都内でも何社も鉄道会社が乗り入れていて、お客様は何社も乗り換えて利用されています。どこに落とし物がたどり着くのかも分からないですから、findで各社が連携できたら、もっと効率的なサービスになるはずです。
それから京王電鉄さんは、京王グループ内でホテルやバス、タクシーのような事業も運営されています。グループ内でもfindを浸透させることで京王線沿線地域の価値向上につなげていけたらと考えています。
そして最終的には家以外の場所にある落とし物は、findに問い合わせるだけで、忘れ物をした日にバスに乗ろうが、タクシーを使っていようが、空港を利用してホテルに滞在していようが、百貨店でお買い物をしてようが、落とし物の情報がすぐに得られる、見つけることができるような落とし物プラットフォームにしていきたいです。

株式会社find 高島 彬 氏

起業を目指す方へのメッセージ

正直に言えば、起業すると苦労は尽きません。起業しなくても自分のやりたいことができる環境にいるなら、無理に起業する必要はないと思います。けれど誰にも頼まれてないのに勝手に使命感をもって実行に移したくなることがあるなら起業すべきです。明確なビジョンがあると、苦しいことも乗り越えられます。すべての拠り所となるのはやはりビジョンです。
findも創業時のアイデアをブラッシュアップして現在のサービスに落ち着きました。実際に事業を立ち上げてみないと何がヒットするのかは分かりません。だからアイデアがあるならとりあえず世の中に出してみて、反応を見ながら修正していくといいと思います。アイデアが浮かぶ人は無数にいるけれど、それを実際に行動に移す人は少ないし、プロダクトにしてお客さんに伝えるところまで進められる人はさらに限られます。
まずは行動してみる。最初から完璧である必要はありません。

記事内の創業・成長支援プログラム

青山スタートアップアクセラレーションセンター

5か月間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。

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