1. 株式会社comipro 代表 櫻井 知里 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社comipro 櫻井 知里 氏

株式会社comipro
櫻井 知里 氏
フリーアナウンサーとしてテレビ番組の進行や、ラジオのパーソナリティ、イベント司会などで活躍。その傍ら不動産投資を行い、2019年に資産管理会社を設立。経営の基礎を学ぶために商工会議所が主催していた創業スクールに通い、2019年インキュベーションプレゼンテーションコンテスト最優秀受賞。2021年4月に事業売却を行い、同年9月に株式会社comipro設立。
株式会社comipro Webサイト

伝わりにくい感情をAIで分析。数値化することで改善点をつかむ

目の動き、表情から会話を数値化するcomiproAI

comiproは、アイトラッキングと感情AI解析を使って、誰かの話を聞いている時の人の集中力や興味の度合いなどを分析して数値化するcomiproAIによるAI解析ユーザー調査事業と、経験豊富なアナウンサーとデザイナーによるハイクオリティーなライブ配信で、企業のブランディングを支援するライブ配信事業を展開している会社です。
2023年3月に正式ローンチしたcomiproAIは、もともと話すことが苦手な人の課題がどのような点にあるのかを目の動きや視線、表情などから分析して数値化し、話し方を改善していくために開発したものです。利用者にヒアリングを重ねるなかで、話を聞いている人が話に集中しているのか、興味をもっているのかどうかを解析できないかという要望があり、話をする人向けはもちろん、話を聞く人向けにも使えるようブラッシュアップしました。
コロナの影響でオンラインによる会議やセミナーが増えたことで、話を聞く人向けのニーズが高まったと感じています。会議やセミナーのなかで、この部分は集中している人が多かった、逆に集中力が欠けている人が多かったといった状況がダイレクトに数値化されると評価をいただいています。

株式会社comipro 櫻井 知里 氏

人前で話すことが苦手な人が多いと気付いてビジネスプランに

私はフリーアナウンサーとして活動する傍ら、2019年に不動産の資産管理会社を設立しました。その時は起業したかったわけではなく、必要性があって法人格を取得しました。ただ会社を設立すると改めて経営の難しさや知識不足を感じ、地元の商工会議所が開催していた創業スクールに通い始めました。
創業スクールで学んでいる人たちと話していると、プレゼンテーションに苦手意識をもっている人が多いことに気付きました。私がアナウンサーということで相談を受けてトレーニングを行った方が数回のトレーニングでガラッと変わり、堂々とプレゼンテーションを行った結果、会社で大きな入札を成功させるほどに成長されました。
苦手意識の要因と、それに合わせたトレーニングで格段に変わるということを知った私は、話し方を学ぶことを体系化させたいと思うようになりました。アナウンサーとして磨いてきた話し方のスキルを応用したメソッドに加え、AIで改善点を数値にして可視化できる仕組みをつくれば、もっと分かりやすく苦手を克服できるのではないかと考えたのです。といっても私はAIどころかデジタル領域には縁がなく過ごしてきたので、システムを構築できるわけではありません。2023年3月にcomiproAIは正式にローンチしましたが、ここまでたどり着けたのはチームメンバーの支えがあってこそです。

株式会社comipro 櫻井 知里 氏

どうしても参加して、成長したい。APT Womenで仲間を得た

東京都女性ベンチャー促進事業「APT Women」に参加したのは2021年の第6期ですが、実は第5期の段階で応募しようかどうか迷っていました。当時の私は起業すらしていなかったので敷居が高いと感じて断念しましたが、それでも諦めきれなくて第6期の面接を受けたのが2021年8月です。私はこんなことがしたいと情熱をぶつけることで何とか選んでいただき、APT Womenのキックオフ開催日の3日前にあたる9月10日に会社を設立しました。バタバタでしたが、本当に参加してよかったと思っています。
第6期には40名の女性起業家が参加していました。私は全員が起業家の先輩だと思っていましたが、話していくなかで参加者の多くが私と同じ悩みや不安を抱えていることに気付きました。スタートアップが抱える悩みは企業規模や事業内容は関係ないと思えてからは、より積極性が増し、皆でディスカッションする時間がより充実しました。がんばる仲間同士として団結力が芽生え、本当に心強かったです。APT Womenの先輩が「APT Womenの仲間は、何年経っても仲間」とおっしゃっていたのですが、まさにそのとおりです。メンバーとは今も連絡を取り合い、いろいろと相談し合っています。

株式会社comipro 櫻井 知里 氏

SNSでメンバーをスカウト。チームビルディングの難しさを知る

よく企業に不可欠なのはヒト・モノ・カネといいます。
チームメンバーあってこそのcomiproAIですが、スタートアップで人材に大きく投資できるほどのお金もなく、どのように人材を集めていけばいいのかが分からなかったです。
ですがある日、APT Womenの講義の中で、「仲間になってほしい人がいるなら自ら声をかける。その人を何年かけてもいいから口説き落とすくらいの気持ちでチームビルディングしていくように」とアドバイスされ、感銘を受けました。
そこでX(Twitter)で気になった1名の女性に「一緒にやりませんか」と声をかけました。comiproAIという事業プランと私の情熱しかありませんでしたが、このスカウトがきっかけで信頼できるチームメンバーを見つけることができたのは今でも財産です。こうやって組織は大きくなっていくのだと実感できた経験でした。

用途の幅を広げることで、生活に馴染むサービスに

当初は企業のセミナーなどで話す機会の多い人の使用を想定していましたが、例えば新商品開発の際に、企業さんが座談会などでユーザー調査を行う時に使えないかと相談いただき、こうした使い方もあるんだとこちらが気付きを与えていただきました。
座談会など何名かのユーザーと一緒に答える調査の場合、同調意識が働いてしまい同じ答えを選ぶことがあります。その際にユーザーの目線や、感情の起伏の部分をcomiproAIで数値化して、リアルな評価を知るために使えないかと声をかけていただき、そうしたニーズに対応できるcomiproAIへと進化させてきました。今まで接点のなかった企業さんにスタートアップとして認めていただき、一緒に事業を大きく育てていける機会を得られ嬉しく感じています。
2025年開催の大阪・関西万博に協賛企業として運営参加することが決まりました。他にも2~3年後を見据えた事業プランが少しずつ前進しています。それらの事業プランが実現すれば、単に数値が出て終わりではなく、みなさんの生活に馴染むような形で使えるようになるなど活用の幅が広がると確信しています。まずは一歩先の未来に向けて、ブラッシュアップを続けていきたいです。

株式会社comipro 櫻井 知里 氏

起業を目指す方へのメッセージ

起業するかしないかで悩んでいるなら、ぜひチャレンジしてください。私自身もcomiproを設立するまで紆余曲折ありましたが、これまでやってきたことは絶対に無駄になりません。仮にその挑戦が失敗に終わったとしても、別にいいと思います。失敗も貴重な経験ですから成功するまで何回でもチャレンジすればいいし、その失敗を活かして別のことをやればいいと思います。まずやってみる、その一歩がとても大事です。

記事内の創業・成長支援プログラム

Acceleration Program in Tokyo for Women「APT Women」

APT Womenは、スケールアップを目指す女性ベンチャーに対し短期集中型育成プログラムを提供することで、スケールアップに必要な経営知識やスキル、それらを共有するベンチャー企業同士の繋がり、更に事業展開に欠かせない協力者・支援者(ベンチャーキャピタル、メディア、大企業等)とのネットワークの獲得を支援します。

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