1. 株式会社TBM 取締役COO 坂本 孝治 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社TBM 取締役COO 坂本 孝治 氏インタビュー

株式会社TBM 取締役COO
坂本 孝治 氏
1990年伊藤忠商事株式会社入社。2007年エキサイト株式会社に転籍。新規事業の立ち上げや上場に関わり、代表取締役に就任。2012年ヤフー株式会社入社。2014年YJ America,Inc.を設立し、社長に就任。シリコンバレーを拠点にスタートアップの開拓・支援に従事するなかで自身も企業側から世界市場に挑戦したいと、2016年社外取締役として株式会社TBMに参画。2018年6月から取締役を務める。
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自社開発素材LIMEXを軸に、持続可能な資源循環システムの構築に挑む

石灰石を利用した新素材・LIMEX

当社は代表である山﨑が2011年に設立した会社です。2008年に山﨑が環境負荷の少ない石灰石で製造する台湾製のストーンペーパーと出合い、魅力を感じて日本での輸入元になることを決意します。しかし普通紙よりも価格が高かったり、品質が安定しなかったため一念発起して、LIMEX(ライメックス)を自社開発するに至りました。紙やプラスチックの代替としてさまざまな製品を製造しています。また資源循環を促進するために、プラスチック製品の再生素材を50%以上含むCirculeX(サーキュレックス)という素材を開発し、この2つの素材を使って限りある資源の価値を持続できる循環システムをつくろうと取り組んでいます。
私と山﨑は、TBMの設立前から知り合いでした。その時に山﨑から紙の代替として新素材を開発したいと考えていると聞きました。これが実現したらとんでもないことが起こるなと感じました。しかし素材開発はアイデアが生まれてから製品化するまで時間がかかるので、コストもどんどん出ていきますし、経営という面では非常に難しいチャレンジであるという認識をもっていました。

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紙代替からプラスチック代替への展開が契機に

2015年に白石工場を立ち上げ、そこでLIMEX Sheet(ライメックスシート)を活用して名刺や飲食店のメニュー表などが製品化されたことで、事業の見通しが立ったことが一つの契機になったと思います。それから2018年にLIMEXのプラスチック代替製品の販売を開始し、LIMEX Pellet(ライメックスペレット)を原料にして、レジ袋や食品容器などの製品が既存の成形機でも安定して製造できるようになり、プラスチックの代替として使用されるようになったことが次の契機になり、当社は前進できました。設立当初はLIMEXを紙の代替として捉えていましたが、プラスチック代替製品にもチャレンジできたことでマーケットが一気に拡大されただけでなく、世の中で話題になっているプラスチック削減、CO2削減により貢献できるようになりました。
用途に合ったLIMEX Pellet(ライメックスペレット)を使用していただければ、各企業の既存の生産ラインで製造することができます。金型を工夫するなど条件はありますが、どこでも製造できる強みをいかし、すでにグローバル拠点での製造も開始しています。LIMEXが今度どれだけ広がっていくのか、私たちも大いに期待しているところです。

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グローバル展開の足がかりとしてX-HUBを活用

もともと当社はサウジアラビアなどと連携してきましたが、さらにグローバル展開を進めていくことを目的に、東京都が主催するX-HUBに参画(2021年度)しました。X-HUBでは欧州カンファレンスコースに採択されていて、特にプラスチックの使用に厳しいヨーロッパの企業とのネットワークが広がることを期待しています。
日本の小さな企業が海外の企業とコンタクトを取るのは難しいですが、X-HUBに採択されたことでサポートを受けられることは当社にとって非常に大きなことです。また近々、海外の展示会で当社を紹介いただける機会が得られました。単独で海外の展示会に出展するのは、経費も含めなかなか踏み込めないので助かっています。

資金調達に重要なのは創業者の強い想い

私がTBMに参画したのは2016年です。TBMに参画する以前の私は、YJ Americaの社長として主にスタートアップと企業や投資家をつなげる仕事に携わっていました。無数のスタートアップを見るなかで、これからのスタートアップはグローバルに事業を展開できなければ成長しないと感じていました。そんななかでTBMはサンフランシスコに海外初の子会社を設立するなど飛躍を続けており、大きな可能性を感じていました。
YJ Americaの拠点が置かれたアメリカではいわゆるエンジェル投資家と呼ばれる個人投資家も多く、スタートアップへの投資も少なくありませんが、TBMのように個人投資家を中心に数十億という資金を集めることができたスタートアップは日本では非常に稀です。なぜ実現できたのか。それは山﨑の強い信念のもと、描くビジョンや事業へのコミットを伝える力がずば抜けている点を評価されたからだと思います。山﨑には、自分がやると決めたことに対して、自分が先頭に立ってやり抜くという強い責任感があります。その姿勢は社員に対しても同様で、社員ミーティングの場でも山﨑自身が、どう伝えたら自分の考えていることが正確に伝わるのかを考え、入念に準備して挑んでいます。社員に想いを伝えるのは社長の仕事だと、当たり前だと思われるかもしれません。でもやりきっているかどうかを問われるとどうでしょうか。この伝えることをおろそかにしない姿勢が、組織力につながり、事業を推進する源になっていると感じています。

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サスティナビリティ革命の推進

LIMEX やCirculeXという自分たちがゼロから開発した素材で製品を製造して販売していく事業を柱にしながら、今後は当社のミッションである「進みたい未来へ、橋を架ける」ために、環境問題に取り組みたいと思っています。CO2排出量の削減や限りある資源を循環させるなどサスティナビリティ革命を推進するための次の一手を打っていきたいです。
例えば当社で製造しているごみ袋は、CirculeXを使っています。日本では回収されたプラスチックゴミの7割が再利用されずに焼却されています。それも7割のうち9割は焼却の際に発生する熱エネルギーを発電などに使うサーマルリサイクルで、欧州から指摘を受けているところです。この課題を解決するために、燃やされてしまうゴミ袋を一度使われたプラスチックを再生した素材で製造し、課題定義にもつなげています。さらにゴミを貴重な資源として回収する入り口も強化しようと、神奈川県横須賀市に、LIMEXとプラスチックを自動選別・再生する、世界初のリサイクル工場を立ち上げました。プラスチックの分類を自動化できる機械をヨーロッパから導入し、2022年内の稼働を目指して準備を進めています。そうして資源循環を促す仕組みづくりを徹底し、SDGsを体現する企業になっていきたいです。

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起業を目指す方へのメッセージ

ゴールデンサークル理論をご存じかもしれません。組織づくりや物事の捉え方を示したもので、Why(なぜ)・How(どうやって)・What(何を)の順で想いや考えを伝えると、共感を生むという理論です。これはスタートアップが起業する時にも言えることで、投資家や支援者、仲間を募るということにおいてもHowとWhatだけではダメだと私は実感しています。仮に上手くいったとしても、何か問題が起きた時に核となるWhyがないので原点に立ち戻ることもできず、修正がききません。資金調達で苦労される企業も多いですが、どんなにHowの部分にあたるサービス内容が未完成でも、Whyがしっかりしていれば投資家も支援してくださいます。なぜこの事業をやるのか。Whyを突き詰めて考えることを大切にしてほしいと思います。

記事内の創業・成長支援プログラム

X-HUB TOKYO

X-HUB TOKYOは、東京と世界のイノベーションエコシステムを繋ぎ、新たな時代を切り拓くスタートアップをアクセラレートするプラットフォームです。
本事業では、都内のスタートアップに対して海外のマーケット攻略に必要な情報、大企業・VC等との人的ネットワーク、メンタリング、ピッチ等の機会を提供するとともに、海外スタートアップと都内企業・スタートアップ等との交流を実施し、これまでにはないニューノーマルの創出をサポートします。

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